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応援団を失う

6/1(水)

私がこの店を引き継ぐ以前からの大常連Tさんが脳内出血で倒れて危篤との報を受け取ったのが昨日の午後。状況はよく分からないが、小脳の血管が破裂して出血が脳の機能を圧迫するようなことなんだろうと想像した。手の施しようのないことだったようだ。

面会謝絶で病院に行けるわけでもなし、誰に連絡しても仕方ないのだが、それでもCane'sを縁に、最近も特に仲良くしていたと思われる人たちにメールを送った。とりあえず電話をくれた人、病院を教えてくれという人、そしてお店に駆けつけてくれた人たち。そんなタイミングで数年ぶりに顔を合わせた久しぶりの人たち。

どうやら時間の問題ということで、奇跡を願いつつも、まだ死んじゃいないのに死を受け入れようとしてた。Tさんの話をあれこれしてた。そんな話をしてたら、今にも階段を上る足音が聞こえて、入口の方から入ってきそうな気がした。「やあ、ゲンちゃん。お疲れ様です。」「あれ〇〇さん、元気ですか」と。「〇〇ちゃん、相変わらずキレイだね」と。

Tさんの好きだったハイファイセットやユーミンのレコードを聞いてみた。日本語の歌詞の、文章の意味とは関係なく、言葉の断片がいちいち耳に引っかかってきて、つい湿っぽくなっちまいやがった。「ゲン、これかけちゃいけないやつでしょ。」とあるアニキが言った。当たり前のような存在が、不在となることの決定的な寂しさが、こみ上げてきてしまった。
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そして今日の昼前に連絡をもらった。そのまま逝ってしまったと。僕らは応援団を失った。Tさんは僕らのチアリーダーだった。いつでも誰かを応援してた。「なっちゃんが大きくなるまではこの店をどうにか守ります。僕がなんとかします」と、根拠のないセリフを自信いっぱいに漲らせて。その笑顔は少年のようで、学校帰りの駄菓子屋のように1杯か2杯引っ掛けて帰っていく、永遠の少年。

あの人の代わりは誰にもきかない。高校野球からスポーツ全般の話を誰とすればよいのだ。誰が僕らをいつでも笑顔にしてくれるというのだろう。この店を、いつでもこの僕を、誰が励ましてくれるのだ。これからどうしていけばよいのだろう。

Tさんの魂は共に過ごした人たちに、その時間の分だけ降り注がれ、それはいつでも我々の中にあるのだけれど、だからどうにかやっていかなければならないのだけど、寂しくなっちゃうじゃんか。あの存在がなくなるということは。


by barcanes | 2016-06-01 21:35 | 日記 | Comments(0)