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プロジェクター・ナイト/Wattstax

第2回目の「プロジェクター・ナイト」。今回もソウル映画だ。1965年ロサンゼルスのワッツ地区で勃発した暴動。黒人たちが町を焼き討ちした「ワッツ暴動」と呼ばれるこの事件から7年、南部のソウル音楽の代表的レーベルとしてヒットを飛ばしていたStaxは、黒人社会への還元としてロスのアメフトのスタジアムで入場料1ドルというベネフィット・コンサートを開く。
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この映画はこのコンサートの模様を軸としながら、町の住人たちの話や、当時爆発的にレコードが売れたという毒舌コメディアン、リチャード・プライアーの風刺的なトークを通して、黒人社会や白人との対比、教会やブルーズといった黒人にとっての伝統的な文化についてなど、全て黒人たちによって語られている。そして、このワッツ暴動がなんだったのか、というテーマがこの映画の主題にもなっていて、興味深かった。

あれは効果があった、そろそろもう一発やるべきだ。革命は必要だ。人々の生活の不満はそのような意見として表れる。しかし断片的な革命(のようなもの)で町はキレイになるかもしれないが、社会構造にはなんのヒビも入らないどころか、より一層強固になる。そのような例はいくらでも挙げられるだろう。

Staxは経営がAtlantic、Warner、CBSと移り変わり、純粋に黒人経営とは言えない。そして白人社会への売り込みも図っていた。これはイメージアップ的なキャンペーンではある。黒人たち自身が黒人たちのことを考え、責任をとるのだと。不満をぶつけ合ってるだけじゃダメだよ、というひとつのメッセージなのだ。我々の中にも潜んでいる革命的な欲求もどこか無責任な意見な感情であって、壊すのは簡単かもしれない。壊した後のことの方が重要で、その先のことを想像していかなければならないのだろう。

それにしてもEmotionsの教会のゴスペルのシーンは強烈で、そのように聖書の物語を共有している世界というのには入り込みにくさがある。僕もニュー・オーリンズの教会に入ったことがある。アル・グリーンばりの牧師さんの歌は素晴らしかったけど、居心地が悪くてさっさと抜け出したかったのを憶えている。さて我々はどんな物語を共有しているのだろうか。

コンサートの白眉はルーファス・トーマスのピンクの半ズボン・スーツと、フィナーレはアイザック・ヘイズの金の鎖!二人ともマントを着て出てくるから、いかにも怪しい。そしてマントを取ると大受けだ。この出落ち感がたまらない。ダサくてカッコいい。

今回上映したのはDVDではなくVHS。字幕の翻訳がまったく別物なのだそうだ。いわゆる差別用語とか禁止用語みたいな問題なのかもしれない。新版の字幕では、なんだかニュアンスが違うらしい。古いバージョンで観れたのも良かったかもしれない。

終演後は今回のナビゲーターDJの二見さんがStax関連のレコードを軽めに回してくれた。映画だけでは完結しないのが、我々のイベントである。そしてソファにもたれて、酒とタバコを片手にというのも映画館ではあり得ない。今回は前回の3倍のお客さんが来てくれたので、これでなんとかこのイベントも中止の難を逃れ、また秋頃に次回作を上映したいと思います。次はカリプソの映画でも。
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by barcanes | 2013-08-25 01:49 | 日記 | Comments(0)