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退避、疎開、逃げる

アメリカの妹が公演先のモンゴルからメールを送ってきた。外国のメディアはかなり深刻な報道をしている。家族をアメリカに来れるように考えてみるから、お兄ちゃんもパニックになる前に早く国外に出た方がいいのではないか、という内容だった。真剣な文面で、妹の家族愛に感謝した。しかし、私はこの状況を見届けたいし、自分だけ逃げるわけにはいかない、と返事をすると、「いかにも日本人っていう感じだね」と、国際人の妹はやや辛辣だ。

今日あたりから、西の方に移動する人の話も耳に入ってくる。やはり子供がいる人、妊婦乳幼児は移動して損はないと思う。西日本方面に親類縁者がいる人は、子供だけでも「疎開」させたらいいのではないだろうか。仕事によっては今休んでも、あとでいくらでもできる人もいると思うし、極端に言えば、ジジババと、子供がいなくてもう子孫を残す可能性のなさそうな我々のような人以外は、早めに退避を考えてもいいかもしれない。大概のジジババはもう長生きしなくてもいいって思ってると思う。誰かのためになれたらいいと、思っていると思う。

原発事故が最悪の事態に至らなかったとしても、この停電の毎日と物資不足の中では、健康を害する人も増えてくるだろうし、関東圏内の人口が少しでも減った方がいいのではないか。放射線や放射物質の恐怖の中で、子供たちと、これから子供を作るだろう若者、特に女性は次の世代を残す役割があるのだ。パニックで身動きができなくなる前に、逃げても誰も文句は言わないと思う。

実家からちょうど連絡があったので、停電中の昼間に寄ってみた。お米やトイレットペーパーなどを分けてもらう。母の名誉のために言っておくと、これは震災の前に買い置きしておいたものです!日頃から物を溜めがちの人はこういうときには強い。しかし買いだめをして、どこか罪悪感のようなものを感じてしまっている人もいるようだが、人それぞれ事情があるのだから仕方ないのだ。身近に困っている人がいたら分けてあげればいい。次から買いだめの際には、一つ減らすと気が楽になる。余計な罪悪感や不安は良くない。人を助ければ誰かが助けてくれる、かもしれない、と思った方が気が楽だ。

別フロアで同居している祖母は、日頃からティッシュもトイレットペーパーさえも使わないらしく、恥ずかしいから言わないで!と母は言うが、祖母は布で拭いて洗って繰り返し使っているそうだ。セロテープなども絶対に買わない。買い物をしたときについているテープを剥がしてとってある。ケチケチした生活を普段からずっと続けているのだ。昔の人は強い。

原発事故の状況の深刻さは変わらず、快方に向かっているようには見えない。東京電力や政府の発表や、NHKをはじめマスコミの報道も、状況の一端でしかないのは誰の目にも明らかで、人々はその一端の情報から最悪のシナリオと楽天的なシナリオと、その両方を見ようとしているが、その落差に耐えられそうになくなっている。現実から目をそらせなければ、やっていけそうにない。みんな開き直ってきたようにも思える。事故現場の対処に全てがかかっている。現場に任せて、我々は普段通りの生活を心がけているように見えるが、内心は不安で仕方ない。でもそういういことを言ってもどうしようもないので、みんなが明るく、希望を見いだそうと努めている。そういう雰囲気は悪いものではない。しかし、そんな雰囲気に日本人もまんざらではないのだと安心しているようにも見える。安心はできない。この現実に麻痺してしまってはいけない。

自分の身を守るため、家族を守るため、何かを守るため、逃げたいと思う人は逃げればいい。残りたいと思う人は残ればいい。今はまだ選択の猶予がある。しかしいざというとき、みんなが逃げるからといって逃げようとしたら、もう間に合わないだろう。自分の本当にしたいことを自分で決めて、人のせいにしないようにしなければいけない。東電のせいにも政府のせいにもマスコミのせいにしても、それでは手遅れなのだ。覚悟を決めとかなきゃならないかもしれない。自分にとっての覚悟とは何だろう。生まれた場所でもないこの地に骨を埋めることなのだろうか。放射能を浴びて健康を害し、死んでゆくのだろうか。

少なくとも自分はここにいたいと思っている。でも身近な人たちには、子供や若い母親、女性の「疎開」について、真剣に検討してほしいと思う。
by barcanes | 2011-03-16 18:12 | 日記 | Comments(0)