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クソったれと山小舎

「クソったれと山小舎」

私が行った山には 「自然」が見つからなかった
私が行った街には 人が見つからなかった
私が行った海には 砂と波の音しかなかった
私が歩いた道は アスファルトで覆われていた

生き物は 私しかいなかった
少なくとも 確実に生きていると分かるのは
自分しかいなかった
そのうち私は 動く虫を見つけた
草や木がいて 小さな花が私を見ていた
誰かが作ったものは 命を吹き込まれて生きていて
つい最近まで生きていた 死んだものを食べた

誰かが書いたものが生きていて
誰かが閉じこめた音楽が 解放されて再生する
誰かがしゃべっている声がする
誰かと誰かが 楽しそうに笑っている
誰かが生きている気配がする
しかし私はまだ
もう随分と
人に会っていない気がする

本を開き 閉じる
耳を開き ふさぐ
私は生かしたり 殺したりする 
人の話を聞く
聞いているだけでは
生きているのか 死んでいるのか 分からない
私は生かしたりもするが
ほぼ殺してしまう
人になにか話をする
通り過ぎて行くのが見える
一瞬 生まれそうになったけど
流れて死んでしまった
たいていは死んで行く
さっきまで生きていたものを食べるように
殺すために 生まれてきたのではないかというように

私が見殺しにしたものに
手をさしのべ 命を救う医者がいた
私にはどうすることもできなかった
でも一方で
死体の山を甦らせることが
できることもある
ガレキの山と埋もれた街
腐った海 枯れ草に覆われた道
黒い血の文字 真空の音楽
はき捨てられた言葉 忘れられた寝言
通り過ぎてゆく叫び 叶わぬ思い
死者を生き返らせる
死の中に生を見る

死んだように生きている人を見つけた
かろうじて 虫の息 まだ生きている
生きながら死んでいる人も
見えてるようになってきた
死んでる方が楽なんだってさ
まだ生まれてない人も たくさんいた
生きている人に会いたい

誰か生きている人は いませんかー!
山にいるのだろうか 街にいるのだろうか
外国にいるのだろうか 未踏の地に 
宇宙にいるのだろうか

それとも近くにいるのだろうか 
生きてる人に会いたい
そうしないと
私が生きているのか 死んでいるのか
分からない気がするのだ

山道の途中に 山小屋があった
暗く無音で ひっそりと
人の気配もしない
オレはやはり 死んでいるのでしょうか
待っていると おっさんが一人出てきた
やはり生きてるのか死んでいるのか
わからないような
口はお喋りのための道具じゃない という
顔をしていた

海は此岸のさざ波
死の音がする
死臭と死の騒音に 満たされている
海が気持ちいいなんて言ったのは誰だい?
そうか そういう意味だったのか
気持ちいいっていうのは
「死にそう」っていうことなんだ
生きてる人が見つからないのは
気持ちよく死にたがってる人
ばっかりだからじゃないか

*********

外は荒れ狂う嵐
その音が心地いい
子守歌のように そっとなでつける
朝になっても暗いまま 安心して眠れる
こんな風に激しく 誰かをなでてあげたい
心地よいタッチで

外は荒れ狂う嵐
なま暖かい風が気持ちいいぜ
左右からバンバン 投げつけられる
雨が呼吸を奪いそうになり 少し苦しい
こんな時誰かがいたら メチャクチャ楽しいのに
ずぶ濡れで 笑うのさ

外は荒れ狂う嵐
全てをぶっ飛ばしながら行く
全てをぶっ壊しながら列島を縦断だ
暴れるのに理由なんてない 嵐なのだから
こんな風にオレも 暴れるまま過ぎ去ってみたい
ノンストップで 気の済むまで

終わらないでくれ
まだ壊し足りないぜ
行かないでくれ
もっと責め立てておくれよ
そうしたら
安心して眠れるから

**********

オレ 嫌われたいんだ
好き勝手やっていたい
自分のペースで生きたい
ダラダラやって 人をムカつかせたい
夜になればなるほど調子が出てきて
別人のように絶好調
言いたいこと言って
困らせてやる
言い返してくれよ
さらに言い返してやる
理不尽な屁理屈で

みんな嫌いなだけなんだ
あれこれ理由をつけても
おまえなんか嫌いなだけさ
だからオレのことも嫌ってくれよ
もっと嫌われたいんだ
どいつもこいつも 自分勝手で
ムカつくんだ
楽しそうに 幸せそうなフリしやがって
ささやかな幸せ 感じちゃったりしちゃってさ
うらやましくなんかないぜ
だってどうせそのうち
同じぐらい悲しい目に遭うんだから
寂しいことになるのさ
ざまあ見ろ!
せいぜい今だけ
今ぐらい楽しんでおけばいいさ
やりたいことやって 下手な歌うたってさ
褒められたいのかい
喜ばれたいのかい
面白くもないぜ
自己満足に吐き気がするぜ
おえーっ!お、おえーっ!
つまんねえよ 文句あっか
毒づいて嫌われたっていいんだ
言いたいこと言って もっともっと嫌ってくれ
そうしなきゃ分かんないことがあるんだ
クソったれにクソったれと言って
なにが悪い

きれいごとなんてクソ食らえ
クソったれと反吐まみれの真実なんて
それこそクソ食らえだ
全てがむなしく 全てがくだらない
全てが無駄で 全てがくそったれ
なんのためにもなりゃしない

酒を飲んで どうなる
タバコを吸って なんになる
音楽を聴いて だからなんだ
本を読んで ためになるのか

金にもならない 歌を歌って
上手くもない 楽器を弾いて
独りよがりの 言葉を並べ
面白くもないことで喜び

眠りたいのに無理矢理起きて
やりたくもない仕事に出かけ
うまくもない飯を食って
聞きたくもない話を聞く

寝たくないのに夜は更けて
食べても食べても腹は減る
ひまがないのにひまつぶし
ひまがあるのにひまつぶし

彼女がほしい
結婚します
子供ができた
家を買ったよ

全てが無駄で 全てがファック
クソったれは 透明にクソったれ
クソったれを映す鏡
愚痴を言うヤツはクソったれの鏡に映してやる
クソは貴重な財産だ
作物を育てるよ

いつか何かが分かる
いつか何かを手に入れる
いつか夢が叶い
いつか立派な大人になる
いつか問題は解決して
いつか平和な世の中になる

そんなバカな!
未来が今より良くなると言うなら
いつになっても未来より良くない今があるだけだ
未来に向かって 進歩してゆくというなら
永遠に 遅れたままの今があるだけだ
いつか どこかに なんて言ってるから
あんたはクソったれなんだよ

「いつか どこかで」なんて言葉は
別れの言葉にすればいいよ
その代わりに
「くそったれ」って言ってやればいいんだよ

************

世の中は巨人阪神戦
伝統の一戦だ
たまに中日が勝っても 文句言うなよ
80勝60敗ぐらいの勝率で 文句なしの一等賞
投票率30%の過半数は いいとこ15%
そのうちの大部分は高齢者ときてる
どっちが勝っても大差はない
試合をすることが一番大事
ヤジを飛ばして盛り上げろ
暴言を吐いて拍手喝采
試合に出なきゃ お金はもらえない
オレはプロなのだから
記録更新を目指して コツコツ努力
いつか100mを 1秒で走ってやるぜ
いつか世界を 指一本で破壊してやる

*********

知っていることはもう 全て知っているし
持てるものはもう 既に持っている
出会うものには 出会う
出会えないものには 出会えない
出会っていても 出会えていない

思い出すだけなんだよ
気がついて 挨拶する
どなたでしたっけ?
あ 思い出した
あなたでしたか
考古学者のように
埋もれていた骨を掘り起こして
一つずつ組み上げる

随分変わったようだけど
もちろん憶えているよ
前に会ったのいつだっけ?
3ヶ月ぐらい それとも3万年ぐらい前だっけ?
思い出させてくれてありがとう
あんたのこと知ってる よく知ってるよ
でもちょっと記憶が曖昧で
断片的なだけ
昔の思い出の話をしよう
今日は昔の仲間が集まってる
よく見たら 知ってるヤツばかりじゃないか

この山小屋に
ずっと昔から変わらず 若いままの女の子がいた
彼女は言った
「いつでもいるから
またいつでも会いに来ればいいよ
まあ時々 用事でいないときもあるけど
寂しくなったら来ればいいよ
私がいなくても 
まあ誰かいるから
知ってる顔が 必ずあるから

道は覚えてる?
一本道だから間違えないと思うけど
夜や天気の悪いときには気をつけて
そして無事たどり着いたら
必ずノックしてね
人気がなくても 大声で呼ぶんだよ
知ってる人が
出てきてくれるはずだから」

**********

私は寂しさを知らない
本当の寂しさを知らない
寂しいことは怖くない
そこに行けば誰かに会える
という場所を
持っているのだから
by barcanes | 2010-12-05 04:01 | Comments(0)