<   2011年 02月 ( 17 )   > この月の画像一覧

浦島ギター小僧

10年ぐらいほったらかしにしてあったストラト(っつっても中古屋で5万ぐらいで買ったやつよ)を人前で弾くことになったので、「そのスジ」の人に調整してもらった。僕はフォークギターから始めたので、3弦巻き弦の太い弦を長いこと張っていた。「君は普通のエレキの弦(.010-.046のセット)を張って、優しく弾きなさい。アコギとエレキは違う楽器なのだから」と諭され、こういうのがストラトの音だ、というセッティングにしてもらった。うーん、今から奏法を改善するのは大変だがやってみよう。力を抜けばいいとのこと。

それにしてもひどいギターだな、とあちこち磨いてくれたりして、弦をきれいに巻いてくれた。やはり「そのスジ」の人は技術もさることながら、ギターへの愛が違う。僕もギター小僧のたどる道で、ギターを毎日磨き、抱いて一緒に寝るように大事にしていた頃があった。弦高やオクターヴ調整のセッティングももちろん自分でやって、ギターの改造や内部の配線や、エフェクターの自作までやった。このストラトのセレクター・スイッチの配線も、自分でオリジナルの組み合わせを考えてやったのだが、どのように、どうしてそうやったのか、もう忘れてしまった。

そうしてお店を始めるようになって、まずエレキを弾かなくなり、そしていつの間にかアコギにも触らなくなってしまった。そんなヤツには絶対なるものかと思っていた、全くギター小僧のたどるような道だ。愛があれば、道具はいつも使える状態に、万全にしておきたい、とその道の職人ならずとも思うだろう。使い続けるか、もしくは愛がなければ。もちろん願わくばその両方。かわいそうな僕のギターたち。

エフェクター類ももう使うこともないだろうと思って全部若手にあげてしまった。つい半年前ぐらいのことだったけど。それでトレモロと「LINE6のDL4」というディレイ&ループ・サンプラーを貸してもらってきた。使い方が分からず一日格闘して、ようやくネットでマニュアルを見つけて納得した。面白いねー。こんなの10年前にはなかったよね、たぶん。

ということで、私は浦島太郎状態なわけです。一日格闘ということは、煙にまかれたように今日はあっという間に2時ぐらいまでお客さんが一人も来なかったわけです。しかもその後来てくれたのは車とバイクのお客さんで、みんなでノンアル・ビールを飲みました。僕も久しぶりの休肝日になり、そのかわり指先が固くなりました。

土曜日の太陽ぬ荘、深夜3時、みなさん見に来てね。おいしいまかないが付きます!食べに来てね!
[PR]
by barcanes | 2011-02-28 20:52 | 日記 | Trackback | Comments(0)

追い抜く、割り込む

市制70周年記念藤沢市民マラソン10マイル、16キロを走ってきた。前夜のお店を終え、結局寝る時間なく、でもまあゆっくりジョギングの気分で、気楽にリハビリのつもりだ。ゆっくり走るレースというのを楽しんでみようか。明け方は寒かったが、チャリで江ノ島に着く頃には陽が出てきて暖かくなり、気分も良くなった。

何人も来ているはずの知り合いには一人も会えず、それなりの大人数の最後の方に並んで、スタートには5分かかった。キロ6分を超えないように、人ごみの隙間に納まろうとするが、なかなかに居心地が良くない。ミニスカの女の子の集団の後ろにつけ、お尻でも見ながら走ろうと思うが、ちょうどいいペースの、いいお尻にはなかなか出会えない。でもせっかくの公道レースなので、センターライン寄りに外れて134号線の真ん中を走るのは悪くない。10マイルの部は辻堂の海浜公園と片瀬の東浜の、藤沢市をほぼ両端を2往復する。3キロぐらいで既にトップ集団が折り返してくる。これでは2周目の周回遅れをどうやって追い抜くのだろうと心配になった。

折り返して5キロぐらいで心配はやはり現実となり、自分の倍ぐらいのペースで走ってくるトップ選手は、チンタラ走っている人ごみの間を縫うように、ジグザグに走っている。なんてこった。可哀想に。優先レーンを作れとまでは言わないが、せめて先頭の選手の前に一人分のコースぐらい空けてあげてもいいんじゃないか。普通は先導車がつくでしょ。そのうち「後ろから選手が来まーす」なんていう声が聞こえて、センターライン側を空けるようになったところもあったが、そういうのは一度だけだった。

こういうのはあらかじめ規制した方がいいのか、それとも自主規制に委ねるのか。我々はみな、規制した方がいいに決まってる、自分を含めてほとんどはバカなのだから、と思うだろう。ルールなんてなくても、みんなが自主的に速い人を優先させることができたらいいのだけれど、強制的にやらないとうまくいくはずがないと考える。今後この大会が続くのか知らないが、この問題は確実に解決してもらわないといけない。

さて私は10キロぐらいまでは頑張ったのだが、やはりペースが上がってきてしまい、せめて今後のウルトラマラソンに向けてキロ5分半ぐらいに我慢しようとした。終始、対向車線のランナーを見ていたが、知り合いをほとんど見つけられず、いつも一緒にレースに出てくれるWアニキをようやく見つけられた他は、ベルーガのマスター柳町さんに3度見つけられただけであった。柳町さんはホントにいつも僕を見つけてくれる。まわりがよく見える人なんだろうなあ。あ、一応こないだみなさんにもらった10周年の寄せ書きのシャツを着て走りましたけど、誰も応援には来てなかったな。ま、いいんですけど。最後の1キロほどはキロ4分台に上がってしまって、江ノ島の桟橋の向かい風を気持ちよく走った。タイムは1:35、制限時間まであと10分というところだった。

日差しは暖かく汗もかき、でも風が強くなってきて身体が冷えると、頭痛がしてきて疲れがぐっときた。人ごみにもやられて、さっさと江ノ島を離れることにした。人ごみにまみれて走るのも疲れた。やはり速いランナーはいいな。チンタラ走ってる奴らをぶち抜いてやりたい。辛い顔して走っているのを見るのも辛いけど、やはり頑張って練習して頑張って走っている人たちの姿はいい。結論として、大勢のレースをのんびり走ってみても、なんにも楽しくはない。16キロぐらいじゃ身体は疲れないけど、精神的にやられた。

あったかい汁ものが欲しくなり、知り合いの沖縄居酒屋に電話するとちょうどランチタイムの開店時間だった。八重山そばとじゅーしーと、生ビールを一杯だけ飲んで、やっとほっとして、ぐわっと寝ました。
c0007525_20461267.jpg

夜、店に行く前にいつものスーパー「OK」へ行くと、レジ待ちの列に割り込んでくるヤツが。こっちは買い物かごの中身の少ない、早そうな列を選んで並んでんのにさ、アラレちゃんみたいな変なダテ眼鏡かけた女の子のところに、一家5人分、満載の買い物かごが割り込んでくるワケよ。軽く頭に来たので「割り込みよくないよーそういうのよくないよー」って呪ってやった。「いや、並んでるから」なんておとーチャンは逃げていったけど、ブランドマークのギラッと入った財布で会計を待っている間、キラキラした服を着た小学校2、3年ぐらいの一番小さい子供が、可哀想な目をしてた。きっとまだ良心があるのだろう。でもそんな大人ばかり見てりゃあ、そのうちマネするようになるぞー。オレの一つ前におばちゃんは黙ってたけど、「アタシだって忙しいんだからさ」とボソボソとつぶやいて別の列に並んでった。きっとその場にいたくなかったのだろう。

OKには「割り込みは他のお客さんの迷惑になります」みたいな注意書きがしてあるのだが、そんなルールには強制力はないわけだし、自主的なモラルに訴えるしかないわけだ。世の中バカばっかりだから規制もやっちゃいけないことも増えるのかもしれないけど、だからといってルールや衆人監視みたいなことでお互いを縛り合うような社会はまっぴらだ。オレも一言でガツンとくるようなハクがつけばいいんだけど、少なくとも自分が受けたイヤな気持ちのいくらかは、そいつに返してやるよ。残りの吐き気はどっかで吐かないといけないけど、これぐらいのことはこうして消化して、消化不良にもケツから出してやるよーん。ブリッ、ブリブリッ。みなさんもどうぞ我慢せずにね!
[PR]
by barcanes | 2011-02-27 20:36 | 日記 | Trackback | Comments(2)

やることになった

3月5日に南口界隈で「菜音」「フリーキー・マシーン」のケンゴさん主催の「ブロック・パーティー」が行われるそうなのだが、その一環で太陽ぬ荘のロビーでもイベントを行うことになっていて、なんと我々「Cane'sバンド」として出演することになってしまった。告知するのもおこがましいぐらいだが、でもこれはもう決まってしまったことなので仕方ない。どんなことができるのか、どんな風になるのか、未だまったく分からない。とりあえず、理解を示してくれた宮下としんぺーの二人を誘って、今回は「Cane'sスリー」でどうにかする。オレは最近お店でやったリーディングが比較的受けが良いので、それを中心にみんなでどうにかなんとかするつもりだ。よその場所で人前でなんかやるなんて大学生以来なので、大変恥ずかしい。しかし、深夜3時という時間だし、シリアスにやっても仕方ないだろう。いつもの「くそったれ芸」でいきます。よろしくね!木曜日に太陽ぬの深夜パックでリハして考えます!

c0007525_2137409.jpg
マジかよー。名前出てるしー
[PR]
by barcanes | 2011-02-20 02:10 | 日記 | Trackback | Comments(0)

2度目の竹原ピストル君

2/19(土) 「竹原ピストル」
Opening Act 稲澤寛
Open19:30 Start20:00
¥2000

昨年9月に当店でライブをやってくれたピストル君がまた来てくれます!ゲスト乱入予定です。

ご来店くださるみなさまへ。申し訳ありませんが、座席の余裕がないためご予約は承っておりません。お早めにいらしてください!
c0007525_20401732.jpg
写真は前回の様子です
c0007525_20412741.jpg

**********************

昨秋から2度目のピストル君。前回は今西太一さんと対バンで、少々やりにくいところもあったかもしれないが(なにしろ太一さん、あんな人だから(笑))、そんなことではなく、2度目ということで少しやりやすくなったのかもしれない、今回も真剣にやってくれて、内容は素晴らしかった。ただお客さんをあまり集められなくて、僕の顔見知りは一人しかいなかったのが残念で、申し訳ない気持ちだった。ただ僕自身としては、前回よりもたくさん話せたし、ピストル君の企画のお店紹介の冊子に紹介してくれるというのでとても嬉しかった。滅多にライブを見に来ることはないという奥様がいらしてくれたのも嬉しかった。まさに美女と野獣。かわいい人でした。

今回は、何年ぶりかでピストル君に会いたいというリクオさんが遊びに来るということで、せっかくだからアンコールで共演しようということになった。二人とも演奏したことがあるという遠藤ミチロウの「カノン」はいい感じだったが、僕のリクエストでもある中島みゆきの「ファイト」は、終盤の転調のところがうまくいかず、リハでは転調しないでやっていたところを僕が口出しして「転調した方がいい」なんて言ってしまったものだから、余計なことを言ってしまったものだと、残念であった。ピストル君は笑って流してくれた。

それにしてもリハから、ピストル君は真剣にやってくれて、一声歌うだけでぴりっと空気が張りつめるような気迫があり、ギターのハンマリングひとつひとつにも力があって、これだけのことを目の前でやられたら、誰だって耳を傾けるだろうし、少し気負けしてしまうぐらいだ。しかもそれを、出ているスケジュールだけでも1月27日から3月6日まで、たったの一日の休みもなく、その後も7月までずっと日本中を回るのだそうだ。決して怠けず、こんなステージとリハの毎日を続けているのだから、そしてその合間に詩や曲も書き、こんなことでは誰にも無敵になってしまうだろう!なんだって、すごいよ。

3月に新作を出す予定で、それ以前に回ったお店にはまた夏以降に新作を携えて歌いに来るということなので、うちにもまた秋ぐらいに来てもらいたいな。そのときにはもっとお客さんを集めて、できたらホテルも用意して泊まる覚悟できてもらって、お客さんにもお酒が入った頃、遅めの時間に始めてもらって、熱い気持ちのやりとりができるような、ヤジのひとつも入るぐらいのライブをやってくれたらいいな。そしてその後、一緒にお酒も飲めたら、最高だ。

今回前座に出てくれた稲澤君、それから毎度世話になってる相沢君、ありがとう。来店してくれたピストル君ファンのみなさんも、どうもありがとうございました。中には4日連続で追っかけてる人もいたりして。今回来られなかったみなさんは、次回は絶対来てください!

1、「BROTHER」
2、「流れ弾」
3、「フィッシュ・オン」
4、「風船ガム」(新曲)
5、「ひも」
6、ピストル君も出演の映画「海炭市叙景」からイメージして作ったという歌。「まだ若い廃墟」
7、ボブ・マーリーの「No Woman, No Cry」のカバー、「諸々、大丈夫だよ」
8、「Catch Me If You Can」
9、「浅草キッド」
10、最終電車
11、「GURU×GURU」時代は誰とでも踊る。
12、「LIVING」
13、「カウント・テン」
アンコール
14、「カノン」
15、「ファイト!」
c0007525_285339.jpg


ピストル君のブログで当店も紹介してくれてます。店主の写真入り!
[PR]
by barcanes | 2011-02-19 20:34 | イベント | Trackback | Comments(0)

ピアノ修理

今日は昼間にピアノの修理に来てもらった。先日の10周年のイベントの日の売り上げで、修理代約10万円が集まった。正月明けに調律に来てもらった際に、必要修理の見積もりをいただいており、その内容は、

1、ハンマースティック修理。弦を打つハンマーの動きが湿気の影響で大変悪くなっております。早急に動きをスムーズにする修理が必要です。
2、ジャックスティック修理。ハンマーを動かしているパーツですが、これも大変動きが悪く、音が出ない原因になっております。こちらも早急に動きをスムーズにする修理が必要です。
3、鍵盤調整。鍵盤も湿気の影響で動きが悪くなっております(特に両端)。これも鍵盤が戻らない原因になりますので早急に修理が必要です。

1と2については先週、ピアノの中身のハンマーの部分だけを取り出して持って帰ってもらい、1週間かけて修理をしてもらった。今日は3を含めて4時間ほどの作業。なかなかの大修理である。これ以外にも、まだお金をかけられればもっと修繕するところもあるし、弦もいつ切れるか分からないのだそう。弦の張り替えにも相当のお金がかかる。

しかしこの40年もののピアノ。修繕の価値のある音色だと思うし、いろいろな経緯を経てうちに来て、いろんな人に弾いてもらえたらと思う。今が最高に調整ができている状態なので、ピアノ弾きのみなさん、ぜひ弾きに来てください!
[PR]
by barcanes | 2011-02-16 01:50 | 日記 | Trackback | Comments(2)

久しぶりに海まで

まったく走らなくなってなにが辛いって、食欲はあるのにお腹が空かない。消化が悪いのだろう。飯もうまくないしお酒も飲めなくなる。いや、飯もおいしく食べるしお酒もまあ飲むのだが、走ってるときは飯も酒も、もっともっとおいしいのだ。走ってない人には分からないだろうが、試してみれば分かりますよ。ビールも旨いし、お酒はたくさん飲めるようになるし、今食べているおいしいご飯は、本当はもっとおいしいのですよ。そういうことに、走らなくなると改めて気付くのです。

およそ40日ぶりに海まで行ってみた。行きはリハビリのつもりで、ウォーキングで。マッサージの仕事をしている妹に指摘されたように、痛んだ方の脚の付け根、股関節のあたりが引っかかる。骨盤の前後左右の歪みが原因なのだろう。いつも破れたままの窓辺の障子が目に入ってくる家の障子はキレイに張り直されていた。日没には間に合わなかったが、人がまばらの、暮れてく海を見ることができた。

海辺に出たので、歩くのと同じぐらいのスピードで、ゆっくり走ってみた。痛みはないが、左右でシューズが地面を叩く音が違う。左右で着地の動きの滑らかさが違うのだ。スピードが出ないようにゆっくり、余計な力が入らないように脱力して走ってみる。痛みが出たらやめようと思って、でもそのまま走って帰ってこれた。むしろ痛みはじめたのはヒザだったりして。9キロを1時間以上かけて帰ってきた。もう真っ暗で星も出ていた。こないだのマラソンに出られなくて残念がってくれたお隣のおばさんが「もう大丈夫なの?」と心配してくれた。風呂に入り冷水をぶっかけ、上がった後はしっかりアイシングをして、湿布も貼った。

ほとんど汗もかかなかったのでお腹ペコペコ二はならなかったが、何となくお腹がへっこんでいる気がした。冷蔵庫に入りっぱなしの缶ビールが旨そうに見えた。今日精米してもらってきたばかりの三分搗きのお米を炊いて食べた。

27日の藤沢マラソン10マイルに、こないだ寄せ書きしてくれた長袖シャツを着て走るのが、当面の目標かな。その次は6月の阿蘇のカルデラマラソン、100キロを申し込んでしまいました。大丈夫だろうか。まあ速く走らなくてもいいのだから、ゆっくりやろう。
[PR]
by barcanes | 2011-02-15 01:47 | 日記 | Trackback | Comments(0)

雪のバレンタインと芥川受賞作について

雪のバレンタインデー。今年は昨日までに5個ももらったので、これはもしかしたら史上最多記録更新か、と喜んでいたら、やはり当日は一つももらえなかった。残念。こんな天気だから、お客さんは3人しか来なかった。もらったチョコのことをあれこれ話しながら食べた。
c0007525_2101820.jpg

***************

芥川賞受賞作が載る文藝春秋を買ってきた。今号は5万冊の増刷であるそうな。芥川賞研究に、数年前の最年少受賞の女流2作を読んだが、面白くなくはないがつまらなかった。2名同時受賞はそのとき(2004年)以来だそうだ。今回の西村さんの受賞のインタビューをテレビで見て、そのダメっぷりに注目させられた方も多いと思う。受賞作「苦役列車」も、ダメっぷりが面白いのだが、当店のダメ男ブームはすっかり収束して、やはり時代を先取りしすぎたか。これから世の中はダメ男ブームが来てもおかしくない気がする。

芥川賞の受賞作をたいして読んでるわけでもないのだが、選考委員の短い選評を読むのは興味深い。各人、てんでバラバラのことを書いていて、それでよいと思う。文学者はそうであるべきだ。その中でも石原慎太郎のは毎度ながらどこかズレてしまっているようだし、村上龍のものは評価が甘くなく、そして的を得ているように思える。まったくの私の目線からであるが。

「作家は「現在の日本」という状況内で小説を書く以上、現実と向き合い、そのテーマには現実に対する態度・対応が織り込まれる。つまり、小説という表現は、現実にコミットメントする装置を自動的に内包している。(中略)・・・作家は無意識のうちに、また多くの場合は無自覚に、現実と対峙し、作品はその哲学や人生の戦略を反映するのだ。(中略)・・・一般論としてだが、高度な洗練は、この閉塞的な現実を目の前にしたとき、作品を陳腐化する場合がある。」(村上龍、今号の選評より)

最近まで村上龍の作品をほとんど読んだことがなかったのだが、2作ほど、おもしろくて一気に読んだ。変態、アブノーマル、異常の中にある正常、正常にふるまう異常を描くのがこれだけ上手ければ、売れるのも今さらながらうなずけた。同様に今さらながらパラパラとめくった「すべての男は消耗品である」も、パンチあるジャブがビシバシと決まっている。たとえば、

「・・・彼女たちが打算的な安定だけを欲しがっているとはオレは思わないのだ。
 男に、きちんと自立して欲しいのである。二人は自立した男というものを知らないので、つまり自分自身のプライドというものを持った男を知らないので、前述の企業、官庁のようなプライドのある勤め口を持っていれば・・・・・・と考えているのである。
 ロマンを失っているわけではない。
 だが、ロマンが、ある制度的約束を侵犯する時だけに発生し、その前提条件として男の自尊心の自立が必要だと知っているのである。
 だからたぶん、二人は、自立した男というものを知らないのだ。
 今やこれは常識ともなっているが、求められているのは、自立した女性などではなく、自立した男なのだ。
 すべてのメディアが、男のプライドを奪う方向で作動している。
 自分だけの情報で動ける男は、あまりにも少ない。
 だから冒険はほとんど成立しない。(中略)
 三人のOLの中で、その二十五歳の人事課だけが、男のことを知っているようだった。
 オルガスムという意味ではない。
 自立した男を知っているから、彼女は結婚論の中であえて沈黙を守ったのである。
 プライドを持った男は、快楽の本質を知っていて、優しいが、危険だ。
 そのことを知っていたのだと思う。
「こういうスナックではやっぱり「別れても好きな人」をうたうのが正しいんですね」と、彼女は言った。
 きれいな人だった。
 オレは、心から彼女の幸福を願ったのであった。」
(1987年、「小説家はOLに憧れている」より)

これをジョークだろうが男の戯言だろうが、あるいは女性蔑視だろうが、いろいろな言われ方をされたのだろうが、これはひとつの現実に対する態度であり、ひとつの真実なのである。自分を正当化することは同時に周囲の現実を反映していて、それを突き通してゆくことが現実へのコミットメントになるのだ。commitmentには委託、ゆだねるという意味のほかに、罪を犯す、犯行という意味もあり、村上龍は当然、その意を含めているだろう。あるいは公約という意味もあり、小説ならずとも言葉にはそういう責任感があるし、もっと言えば行動も人生も現実へのコミットだ。同じ言葉でも行動でも人生でも、その時代の善悪によって、よければ聖人、悪ければ悪人である。そしてそのどちらでもないものは、無難で陳腐となる。

現実の中で揺れ動くことも我々の現実なのだし、無難な現実、陳腐な現実というのもあるのかもしれないが、それはなにもコミットメントされていない。つまりそのような我々の現実は、現実にタッチしていない、非現実の現実なのだ。夢とも虚構ともいえる。そのような小説は、小説はそもそも虚構なのだから、という逃げを打つばかりで、現実にあまりタッチしない。現実にあまりタッチせずに、なるべく最小限にとどめたい人を保守と呼ぶのかもしれないが、何かを守るためにはやはり、現実にコミットメントしなければならないのだ。

つまり、ダメ男にも2種類いるということだ。無難で陳腐なダメ男と、コミットするダメ男。バレンタインデーにチョコをもらえるダメ男と、もらえないダメ男。こんな日なので、無理矢理こじつけてみた。

**************

もうひとつの受賞作「きことわ」も非常におもしろくて一気に読んだ。夢や思い出、記憶が何重にも絡まり、なにが現実でなにが夢だかわからないまま、読者の我々にもなにかを思い出させる。思い出させるきっかけも消えて忘れ去られていくことを、書き留めることで留めようとする。しかし現実は忘れ去られてゆくことで前に進んでゆく。現実にコミットメントするように、過去にもコミットメントしてゆくことができる。なぜなら、降り積もった過去の歴史を背負った我々は、歴史を改編不可能な確固たるものと捉えがちだが、過去も未来と同じように開かれているのだし、思い出を捉え直すことも、古い人間関係を結び直すこともできるし、忘れていた過去が未来に呼び起こされることもある。未来によみがえる過去は、それはもう過去ではない。だから、いくらでもやり直すことができるのだ。その気になりさえすれば。過去も未来も、コミットし得る我々の揺るぎない現実なのだ。

時間と忘却。書き留め、あるいはなにかに託し、置き残すことで忘れ去ることができて、そこにようやく真空の現実が現れ、引き寄せられてゆく。いや、未知の未来の真空に吸い寄せられるのだ。過去に対する忘却とは、未来に対するなんであろうか。知識や情報や恐怖で防御してしまわず、未知に開いていること。未来は未だに書かれていないのだ。

ただただ、現在に留まろうとすることが、現実にこだわり、今という時間を止めて注視しようとすることが、現実を精緻に描ききろうとすることが、陳腐で静止した現実を生むのだ。現在、という時間など存在したことがない。今、という時間を生きるということさえ、欺瞞で嘘くさい。我々は常に未来と、未来によみがえる過去に投げかけながら生きている。自分の脚で地面を後ろに蹴り捨てて、前に進むのだ。
[PR]
by barcanes | 2011-02-14 01:45 | 日記 | Trackback | Comments(2)

Voices Inside 歌謡ソウル特集

毎月第3土曜の「Voices Inside」、今月は歌謡ソウル、あるいはJ-ソウルということで、ソウルを感じさせる歌謡曲、ソウルっぽい歌謡曲などをかけてみます。ホスト二見潤はそれに対抗して、王道ソウルをかけます。

2月12日(土) Voices Inside 歌謡ソウル特集
ホストdj:二見潤+今月のゲスト:かずまッくす、久保田耕
9時ごろより。

USTREAM中継します。
http://www.ustream.tv/channel/channel-canes

*********************

ソウルを感じさせる歌謡曲、というものを模索してみようというテーマであったのだが、やはり気持ち的な部分にソウルを感じてしまうことになると、演歌でも民謡でもなんでも、魂が入っていればソウルになってしまうし、ノベルティ・ソングみたいなものも、黒人音楽の流れの中にはあるものだし、年代によっていわゆるR&Bの音にも流行があって、単にソウルといっても難しいことがよく分かった。音色的な部分、例えばノーザンソウル的なストリングスの入り方とか、70年代のファンク的なリズムとか、80年前後のディスコの音とか、そういうアレンジ的な部分でテーマを絞ってみるのもいいかもしれない。あるいは山下達郎的な、明らかなパクリものからまず攻めてみるのも必要だろう。

そんなことで、普段のルーツ的な古めのソウル中心の"Voices Inside"からすると、カズマックス林さんの「ほほえみ歌謡ナイト」にジャックされた感じでもあったが、お客さんたちは意外に盛り上がって、踊りまくる姉さん方にフロアも支配され、受けは良かったのだった。USTで聞いてたという方からも面白かったとの感想をいただきました。今後の可能性も見えてきそうだ。

来月は"Voices Inside"を続けて3周年。サウサリートのジョージさんをメインゲストに迎えて、特別版でお送りする予定です!
[PR]
by barcanes | 2011-02-12 20:18 | イベント | Trackback | Comments(0)

一夜明けて

夢のような一日が明けて、のんびり昨日の片づけをしつつ、いただいた花たちを生け直してもらいながら、お店を開けました。昨日のギター弾きたがり兄さんは、「昨日はオレ、頑張っただろ?」と、ウン、明らかに自分のライブより弾きまくってたし、普段やらないようなことやってたもんね。そして「お前、バンドやった方がいいぞ」と仰った。えーっ!ホントすかー。

でも意外とリーディングもギターも評判良くて、少なくとも調子に乗るには十分なぐらいであった。そんなことを聞いて、若手たちも「うんうん」と頷いてくれ、それで早速、出演のオファーが来た。面白がってくれる人もいるもんだ。どんなもんかなあ。調子に乗っとくか。
[PR]
by barcanes | 2011-02-06 01:40 | 日記 | Trackback | Comments(0)

ハングリー・ハート

柄にもない仕事を始めて10年たった でもやっぱり
合わないものは合わない 何度もやめようと思った
川の流れに任せてここまでやってきたけど
沈まないように泳ぎ続けるのは もう限度

なんとかお店を開けても気分が乗らない
お客に気を使わせちまって申し訳ない
一人で重い荷物を背負い 後始末をすることに慣れても
いつも同じ自分でいることには どうしても慣れない

ドアをあけるように 自分をひらくことは
店をひらいているように 自分をひらいておくことは
オープンしてあけっ放しにして おくことはやっぱり
難しいのさ 開けたドアは いつか閉じないと

*********

やめたいんだ いつかは
やめなきゃならないときが 必ずいつかきっと来るから
そしたらどうなるだろう その後どうしたらよいのだろう
なにが残り なにが忘れられていくのだろう

日々の矛盾 自由でいたいけど一人では寂しい
日々の矛盾 一人でいたいけど 誰かに会いたい
眠る時間に起き 身体に悪いものを飲み 言いたいことは噛み合わない そう
ここは矛盾の巣窟なのさ オレは矛盾の番人だ

闇の片隅に 人がポツポツと集まり
静かな夜は いつしか酔っぱらいの喧噪だ
日々のカオス まったく筋書きのないドラマ ランダムと
生きることを楽しむのさ 偶然を選びとってゆくのさ

**********

誰もがみんな 生きる問題を抱え
誰もがみんな 答えなんてないって分かってる
なにかを手に入れ なにかを達成しても
決して満たされない 安心できないことも知っている

男と女 決してわかりあえないからといって
楽しさや喜びだけが 目的じゃないはずさ
解決できない問題は永遠に続いてゆくから 
答えはひとりひとり なにかを残してゆくのさ

なにかを残してゆくのさ 誰かが気づいてくれるさ
誰かが育ててくれるさ 誰かがきっと引き継いでくれるさ
頑張ってるふりしても 楽しんでるつもりでも
幸せなふりしても うまくいってたはずでも

何かが足りない まだ何かが違う
決して満たされない旅はまだまだ続いてゆく
でもその旅には帰る場所と 一軒のバーが必要さ
それが僕らの ハ、ハ、ハングリーハート

***********************
HUNGRY HEART
by Bruce Springsteen

Got a wife and kids in Baltimore Jack
I went out for a ride and I never went back
Like a river that don't know where it's flowing
I took a wrong turn and I just kept going

*Everybody's got a hungry heart
Everybody's got a hungry heart
Lay down yor money and you play your part
Everybody's got a hungry heart

I met her in a Kingstown bar
We fell in love I knew it had to end
We took what we had and we ripped it apart
Now here I am down in Kingstown again

*Repeat

Everybody needs a place to rest
Everybody wants to have a home
Don't make no difference what nobody says
Ain't nobody like to be alone

*Repeat
[PR]
by barcanes | 2011-02-05 22:14 | Trackback | Comments(0)