「健康病」とSOUL

12/5(火)


先日たまたま引っ張り出して読んだ河合隼雄さんの「こころの処方箋」は、文庫本4ページ分の連載をまとめたもので非常に読みやすく、かつ今の自分に役立つものだったのだが、その中でもっともキャッチーかつ皮肉が効いて、唯一常識的な気遣いを欠いていると思われる小文をご紹介しよう。タイトルは「健康病が心身をむしばむ」である。


『病気というのはいずれにしろ不愉快なものであるが、最近流行の「健康病」というのは、定義どおり、本人は病気と思っていないので、それによる被害が潜行するところが恐ろしい。(中略)それから生じる近所迷惑などお構いなし、という点で「ほとんど病気」の状態であるが、本人はそれに無自覚である場合のことを言う。』


「最近流行」と書いてあるが、1991年までの連載の頃である。この本で何度も出てくる「近所迷惑」という言いまわしがいい。「空気読めない」よりスケールが小さくていいと思うので、"KM"と憶えよう。しかしタバコの問題はむしろ、健康というよりKM問題として扱われているだろうから肩身も狭くなる。


『健康病の恐ろしさは、伝染性をもつことであるし、そもそも健康病の人は他人に伝染させることを生き甲斐にしているようなふしがある。煙草はよくないとか、酒はほどほどに飲むべきだなどと、いかにも親切そうに伝染を試みてくる。(中略)どうして、健康病の人は他人のことを気にするのか。それは自分のことが何となく不安なのである。健康第一にしがみついていても、何となく不安なので、どうしても仲間をつくり、しがみつく相手を増やしたいのである。』


酒とタバコと夜更かしを専門としている手前どもとしては、不健康こそが商売であるので、深刻な健康病患者はそもそも近寄らないはずだが、そのような方もいらっしゃらないことはない。我々はむしろその不安を「不健康」の方で和らげてさしあげるわけである。


『言いたいことは、人間の人生については実に多様な見方が可能だということである。多様な見方によって豊かな人生を送れるはずを、健康というただひとつのことに縛られてしまうことの精神の貧しさを指摘したいのである。』


お酒も適量なら健康に良いとかタバコもストレスの解消とか、どうにか健康に結びつけようとしてみたりするのも健康病かもしれない。精神の豊かさを自己欺瞞するのはやめにしようではないか!また、「健康」というところを他の言葉に置き換えることもできるだろう。良しとされているようなこと。例えばお金とか景気とか株価とか…。


『現代人は「心」に失望しつつ、魂の重要性を再び認識しかけているのだが、そんなものは知らぬので、それをとび越えて、「体」をやたらに大切にするのではなかろうか。最も重要な魂のことを知らぬことから生じてくる不安を何とかごまかそうとして、体を大切にする。(中略)魂のことに思い及ぶことで、健康病からの回復がなされるように思うのである。』


この本を読んで、私は心と魂とを混同していたことに気がついた。それはまさに「魂のことを知らぬ」ということである。と同時に、心に過負荷がかかってしまうということにもなる。心・体・魂の三元論として考えるなら、心と体のバランスを保つにはソウルが必要なのだ。さて自分のソウルとは?あの世に持っていけないもの以外のもの。


健康、長生き、お金やお金が生む利益。ソウルのない奴はそういうことにしがみつくしかないのだから仕方がない。しかし、失いかけたソウルを取り戻すことができるならば、あらゆる健康病に溢れたこの時代を何とか生きぬいていくことができるかもしれない。SOUL!(ドン・コーネリアス風にね。)


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身も心も冷え込むこの頃。ホット・ワイン(ヴァン・ショー)で貴方のソウルを温めてください。


ホット・ワインのレシピには特に決まりがあるわけではありませんが、甘みとスパイスとちょっとした果汁、という(奇しくも)3要素が含まれることが多いと思います。当店のホット・ワインにはリンゴ、オレンジ、シナモン、クローブなどが入っております。



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by barcanes | 2017-12-05 20:10 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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