ジョン・アバークロンビー追悼かわECM
2017年 10月 27日
このイベントでもかかることの多かったJohn Abercrombieさんは、ECMを代表するギタリスト。先日8/22の訃報を受けて、主宰かわい君がすかさず特集を組んでくれた。Johnny “Hammond” Smith “Nasty!” (‘68)やBilly Cobham “Crosswinds” (‘74)といったキャリア初期の参加作から、初リーダー作がECMの “Timeless” (‘75)となるわけだが、このオルガン・トリオ作が彼の代表作として名高いのも、内容を聞けば頷けるというもの。
とは言え、アルバムによってアバクロさんのギター・スタイルは様々で、一貫したカラーだとかタッチだとか、これぞアバクロさん!というような分かりやすい特徴は見つけにくい。良くも悪くも器用で、共演者に寄ってしまうというようなところがあるのかもしれない。自己主張のオシの強さのようなものがなく(でも神経質だったそう)、捉えどころが難しくて全貌は掴めない。その神経質さは、自己の内面というよりはきっと音楽やサウンドの方に向かっていたのだろうと想像する。
「あと3枚でコンプリート!」というかわい君のCDの山を見れば、彼のアバクロ愛も一目瞭然。全てかけたわけではないが、各アルバムから彼の厳選した曲を聞かせてくれた。最後は最近の遺作“Up and Coming”(“Joy”収録)まで。田尻のソロピアノ・コーナーでもアバクロさんを3曲(”Joy”, “Love Song”, “Back-Woods Song”) 取り上げてくれた。この日の昼間に調律したてのピアノはナチュラル・リバーブがとてもよく響いて、素晴らしいサウンドだった。田尻もアバクロさんの曲と向き合ってみて気づくようなことがあったようだった。
それは間合いのようなものかもしれないし、リズムや拍子とは違ったタイム感というか、音の持続や残響を含めた上でここぞという時に鍵を打つようなタイミング(当然そこには恣意性や自由が含まれる)さえも曲の構成に含まれている、といったような作曲のあり方なのかもしれない。即興音楽のようでありながら構成された音楽でもある(それは計算された織り込み済みの自由という意味ではない)という、我らの今求めているようなことを、アバクロさんはずっとやってきたんだろうなと思うと、感慨深くそしてそんな作品を残してくれたことに対する静かな感謝が心に残った。そしてまた、人の死が出会いのきっかけにもなるという奇遇を信じないわけにもいかない。