夏の郊外へ/ハワイ〜DooWap〜南部R&B

7/21(金)

関根さんの金曜日5回目は、これまでのリアルタイム音楽トレース・シリーズは一休みして、夏らしくハワイアンから。ソウル好きサーファーだった若き日の関根さんは、70年代半ばのサーフィン映画からハワイ音楽に傾倒していった。ちょうどソウルも薄く軽くなりゆく時代。リアルタイムのブラック・ミュージックへの関心が薄れていくというのも分かる気がする。ライ・クーダーが参加したギャビー・パヒヌイからハワイアンを知った私のような者とも、やはり似たような趣向性があったのだと思える。

興味深いのはそのタイムラグの周期で、その日集まったVoicesクルーなど40代半ばのメンバーたちと関根さんとの歳の差は10数年(私とは19歳違い)。音源の再評価や再発などのタイミングがちょうど合ったのかもしれない。例えば自分にとって、6つ上のアニキたちとは高校のOB、バイト時代、そして現在のお店でもやたら縁があって、ひと世代ふた世代ぐらいのギャップがちょうど良いのかもしれない。しかし、近似の小さなズレを合わせるのが難しいように、同世代でもなかなか似たような趣向を持ち合わせる人と出会うのは難しいのに、小波の周波が周期の大きいところで大波となって重なり合うということが起きるのかもしれない。どーでもいい論考かな。

それにしてもハワイアンのレコードの録音が素晴らしい。おそらく70年代後半にもなると、西海岸あたりのエンジニアがハワイに移っているのではないだろうか。(全く証左してませんが。)テナーからファルセットに抜けてゆくふくよかなボーカルももちろんだが、特にギターのアコースティックの音色が素晴らしい。スラック・キー・ギターのすっきりとして広がりある弦の響きは、サウンドの中核に置かれるべくして丁寧に作られているように感じられる。

さて我々が若い頃に好きになった音楽は関根さんが若い頃に好きなった音楽で、もちろん既に過去の音楽。そして20代の関根さんも次第に、当時の過去の音楽に傾倒してゆくのである。特に、DooWapなどのコーラス・グループ。ニューヨーク、西海岸、そしてシカゴあたりと、東中西各地域の特色を尋ねながら聞いていった。西海岸は「オープン・ハーモニー」が特徴とのこと。通常上から二つ目の声がメロディラインとなる「クローズド」に対して、一番上の声がメロディとなる、とのことですが、間違ってたらゴメンナサイ。

近年わりと国内のゴスペル/グリー系のコーラス・グループが人気あるのは好ましいとは思うのだけど、まあぶっちゃけDooWapに対するリスペクトがなさすぎるのが物足りない気がしてしまう。おそらく難しいのだと思う。ブラックのコーラス・グループもソウルの時代になって、おそらく(おそらくばかりでスミマセン)楽器のアレンジの幅が広がり、またリードシンガーの個人的な力量がプッシュされる時代になり、ボーカル・アレンジの発展が止まったのだと思う。DooWapの時代のコーラスワークは、伴奏に頼らずに成立するような工夫された複雑さを持ち、その時代ならではの競い合いの中での発展を遂げた後、バベルの塔のように急速に廃れていった。

おっと、コーラス・グループのハーモニーはバベルの塔なのか。リード・シンガーの力量による個人主義、あるいは職人的スタジオ・ミュージシャンとエンジニアリングの組織力がそれを崩壊させたのだろうか。無為な問いを立ててしまったかもしれない。しかしその後のあらゆるアカペラ的グループのなし得ることができなかったような何かが、この時代のコーラス・グループが発展させたコーラス・ワークに見いだせるはずだ。きっとそれ以上のものがないからこそ、この時代のコーラス・グループに入れ込む者がいるのだと思う。

折に触れ関根さんにはR&B、ゴスペル、ソウルのコーラス・グループの貴重なレコードを聞かせてもらってきたので、いつの間にか耳に馴染んだのかもしれないが、私もその魅力にようやく気付いてしまったようだ。もし歌を歌える人が4人ぐらいいたら、バンドよりもコーラス・グループをやりたくなっちゃうかもしれない。でも僕らみんな歌が下手だからなあ。

ハワイ、コーラス・グループときて、この日の3本柱のもうひとつはR&B。ニューオーリンズ、ルイジアナ、テキサスあたりの、南部のリズム&ブルーズに特に入れ込んだという関根さん、意外にも「シカゴは避けた」というのが興味深い。確かにスタジオ・ワークの発展が早かったCHESSを筆頭に、シカゴはブルーズも都会的だ。シカゴとは一線を引いていたような南部出身のブルーズ・マン、特にエルモア・ジェイムズが関根さんのフェイバリットだそうだ。今度エルモア特集をやろう!

こうして振り返ってみると、この夜は関根さんのアーバンな嗜好が通底していたように思える。音楽が洗練と大量消費に向かうのと同時代に既にその逆方向へと、人間臭さと田舎臭さの郊外へと精神が向かっていった。そんな関根さんが若い頃から波乗りに遊びにきていた湘南の海辺に移住して来られ、この店でレコードを聞かせてくれるようになったのも、やはり世代を超えた縁があったとしか思えない。

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by barcanes | 2017-07-28 21:33 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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