ハンマーダルシマーの歴史的邂逅とラグタイムギター

6/26(月)



札幌のハンマー・ダルシマー奏者、小松崎健さんはもう何度目かのCane's。今回は小樽のラグタイム・ギタリスト、浜田隆史さんを初めての連れてきてくださった。全く上達しなかったものの、ステファン・グロスマンの教本で高校生の頃からラグタイム・ギターを練習してきた私としては、非常に楽しみだった。実は生のラグタイム・ギターを見るのは初めてだったのでした。


開演前にRev. Gary Davisやレオ・コッケなどを聞いて、ラグタイム・ギターの話をいろいろお聞きすることができた。こういうことで少し打ち解けられたような気がするから、レコードやCDはありがたい。終演後にはグロスマンの教本に載っている曲が多数収録されている”How To Play Ragtime Guitar”も聞いた。「これはUK盤だね。Transatlanticレコードだ。懐かしいなあ。練習したなあ」って小松崎さんも懐かしがってくださった。昔はレコードを売っていたそうだ。


今回のゲストは「ダルシカフェ」というデュオの井口夫妻。ダンナさんの井口敦さんはダルシマーなどの楽器を作っている職人さんで、ブズーキやギターなどを弾かれる。珍しいマウンテン・ダルシマー(同じダルシマーという名前ではあるものの、オーストリアのチターを起源とするもので、イランのサントゥールを起源とするハンマー(ド)・ダルシマーとはルーツが全然別のものだそうです)など、初めて実物を見るものもあって、奏法などを教えていただいた。非常に興味深い。


奥さまの井口てん世さんがハンマー・ダルシマー奏者で、この世界のベテランと思っていた小松崎さんにとっても国内では数少ない先輩だという。ハンマー・ダルシマーの情報がなく、手探りで楽器を自作してみたりしていた頃に、画像の荒いホームビデオのコピーのコピーのようなものを手に入れた。その映像でハンマー・ダルシマーを弾いていたのが井口さんだったそうだ。今回はそんな30年来のお知り合いながらなんとお二人の初共演とのこと。リハで最初に4人で輪になって共演曲を演奏したとき、私にはその意味が分からなかった。歴史的な瞬間だったのだ。


本編はダルシカフェから。井口夫妻はアイリッシュの曲など物悲しいメロディーの繊細な響きが印象的だった。(しかしアイルランドではハンマー・ダルシマーはほとんど使われていないそうです。)「運河のカモメ」というユニット名の小松崎・浜田デュオは対称的に、暗さのある曲でもどこか明るい印象。お二人の作品を中心に、ショーロやラテン系の曲が多いとのこと。


私はこういう無国籍感といいますか、言葉で言っちゃうと区別が始まってしまうけれど言葉で言わなければ分からないような、区別を超えて似たように聞こえるものが好きです。区別とは個別であることの背後にあるものではなく、個別の積み重なりの総体の中から自ずと生まれてくる傾向や確率を便宜上グループ分けしたものであり、利用するもされるも、あくまで便宜上のものだと思っちゃいたいですね。話が逸れてしまいました。


浜田さんはオリジナルのA♭6チューニング(Otarunay Tuningという名前がついてる笑)を追求し、それで全ての曲を演奏されている稀有な、そして良い意味の変態(どんな音楽でも追求されている方はみんな変態です)、そしてどこかほのぼのとした緩さを持っておられて、まさに「ゆるディープ」。ラグタイム・ギターはテクニカルだけど、それをキッチリやるよりはラフにやったほうがカッコいいんだよね、とGary Davisを聞きながら感じていたようなことが、浜田さんらしいスタイルに昇華されていて、とても味わい深いギターでした。

今回は左右上部からステレオ・エアーで録音してみた。いいコンデンサマイクなんて持ってませんのでフツーに58で拾いました。デジタルではエアーの高音ノイズが目立つんですけど、カセットに入れるといい感じになりますね。愛聴です。小松崎さんにも送って差し上げなきゃな。

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歴史的な邂逅の瞬間。

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ダルシカフェ井口夫妻。

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運河のカモメ。浜田さんは小樽の運河のあたりの路上でも演奏されてるそうです。

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ハイフレットで軽やかなフィンガリングを決める浜田さん。

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文中の2作。
Stefan Grossman "How To Play Ragtime Guitar" (1975年)
Reverend Gary Davis "Pure Religion & Bad Company"(Smithsonian/Folkways 57年録音)

浜田さんのラグタイムとオリジナル半々のソロ・ギター・アルバム「実際に何度かお客様の全く来なかったライブを経験していて、その「悲劇」をどうポジティブに展開するかが大きなモチーフになっています」と解説されているオリジナル曲「誰も来なかった」が泣ける。
HAMADA Takasi "Ragtime Children guitar solo." (2016年)

小松崎さんにいただいたハンマーダルシマーとプサルテリウムという弦楽器のデュオ作。
小松崎健 Sally Lunn 「鍛冶屋と糸つむぎ」

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by barcanes | 2017-07-07 14:44 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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