ピアノバトルとアップライトな夜

1/20(金)

水曜日の興奮冷めやらぬ沢田穣治スペシャル2Daysの2日目。沢田さんは髪を切って現れた。先に到着した田尻はいつになくリラックスした様子で、指慣らし&サウンドチェックにピアノを鳴らしている。今日の室内にはナチュラル・リバーブが効いていて、ピアノの高音鍵がいい感じだ。すぐさまアップライト・ベースをケースから抜き出し、低音弦をはじき始める沢田さん。先手有利か後攻めか。今夜はバトルである。

二夜連続の方も少なくない来客がいつものように開演時間を過ぎてから集まり始め、40分遅れでスタート。先行は田尻有太。当店おなじみの変態ピアノ王子である。フリー・ソロ、オリジナル曲、そしてドビュッシー。ピアノは生音で、リバーブ音を少しだけ乗せた。聴客のみなさんが静寂の中で音に耳を傾けている。このようなライブは当店ではあまりないのだが、静かだけど緊迫感ではなくむしろ和やかであり、何が起きるかを見届けようという期待感にあふれた、良い時間が流れていた。

後攻めに、沢田さんが譜面を手にして自作曲を2曲。こちらはリバーブなしの完全生音。亡くなったシバリエさんに捧げられた曲が印象的だった。優しい打鍵の音が柔らかく響いていた。決して力強い方のタッチではないと思っていた田尻のピアノを、粗暴にも感じさせる作戦か?清濁の混在した静寂。それにしても、二人のピアノは似ているように思う。

もう一度田尻のソロがあって前半は終了。むしろ強いアタックの連打や音量のダイナミクスで、田尻は持ち味を出していたと思う。後半はギターの馬場さん、ドラムの沼さんも到着して、リハなしのセッション。沢田さんは「本職」のコントラバスだ。この3人の組み合わせは初とのこと。空間的なギターの映える、静かめジャジーなサウンド。途中からまえかわさんが入り「カツヲ」のレパートリーなど。水曜に速すぎた”Zappa’s Mode”のリベンジも、トロンボーン不在の分の熱量ある力技感が面白かった。

最後に田尻が加わって、全員でのフリーも良かった。沢田さんは目指すものを提示しているわけではないのだが、ちょっとした舵取りと言うか、何かモチーフのようなものを差し出しているのだろうか、バンドはそういうものに反応し合って非直線的に進んで行く。真っ直ぐ進んでいるように見えて、横から見ると縦方向に大きく蛇行しているような。例えば10分の曲でもそれは数十秒ほどの出来事を拡大して引き伸ばした時間であるような、そんな直進しない指揮官である。あ、感想には個人差があります。
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この日のP.A.としてはウッド・ベースの超低音が出ていてマイク拾いでは制御が難しく、一方ドラムの音がやや小さくて、ライブではもうひとつ上手くできなかったのだが(だってサウンドチェックなしだしー)、後で聞くと録音ではうまく録れていたから不思議である。むしろ録音の方が良いくらい。神ってきたなー、オレのマイキング。

終演後にはさっそくゴールデンウィークに「カツヲスペシャル」のライブと、沢田さん沼さん田尻のトリオも決めてくれた。略して「沢田沼田尻」。略してないか。田尻のことを気に入ってくれて嬉しい。作曲やアレンジングや、さらに変態性についての秘伝が伝授されることだろう。そして変態性についての理解を認めてもらえたのか、沢田さんのこれまでに関わったアルバムにして200枚にも及ぶ録音作品を振り返りながら聞く会をやりたいとおっしゃった。タイトルは「沢田穣治の仕事」。もちろんやりましょう!とお答えしたがちょっと我々では役不足の感もある。

沢田作品としては私はリアルタイムで買ったショーロ・クラブの2枚など、わずかなものしか聞いていない。まあそんなことどうでもいいのでしょうけど。でもこの日も過去の作品を聞かせてもらったりCDを一枚頂いたりして、沢田ワールドに対する興味が俄然湧いてきましたので、ちょっとずつ聞いてみたいと思います。イベントとしては我々がやってる「かわECM」の番外編として受け止めてみたいと考えております。

遅い時間まで、この二日間の録音を残ったメンバーで聞き直したりして、沢田さんは「ピアノバトルとしては俺の負けやな」と最後に言い残して帰って行きました。若手思いだなあ。さすがプロデューサー。調子に乗せるのが上手い!でも私が田尻をそそのかしてソロピアノを弾くように推してきた「変態ピアノ王子」プロジェクトが次の機会へと繋がったことが、個人的にとても嬉しいのです。小さな果実かもしれないが、これまでやってきた遊びがこうして実を結ぶものである。それにしても濃密な二日間だった。こうして後日にこれを書いているが、もはや過ぎ去ったはるか昔のことのようにも感じられる。

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沢田さんに頂いた1999年のギターとベースのデュオ「Kakusei-Zen-Ya」。エフェクトの効いたアブストラクトな一枚。

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FMでよく流れていたような記憶があるショーロ・クラブの「Brasiliana」(2000年)。これは売れたんじゃないかな。私もよく聞きました。「カツヲスペシャル」でのレパートリー「紅い花」「Sapo Verde」も収録されていました!


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by barcanes | 2017-01-24 04:34 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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