愛の問題

1/17(火)

前日の続きでクルセイダーズを聞いていたら、お借りしていたマイクを取りに来てくれたアニキ。翌日にまたトロンボーンの録音があるという。「いい音だなあ。」クルセイダーズはサックスとトロンボーンの2管である。私も翌日には「カツヲスペシャル」で和田さんのトロンボーンを聞ける。

"2nd Crusade"あたりの音の秘密のひとつはやはり録音、名高き西海岸のウォーリー・ハイダー・スタジオ。CCR、CSN&Y、デッドなど有名盤も数知れず。トム・ウェイツの2nd「土曜日の夜」などもそう。4th ”Small Change”ではオーケストラを含めた全演奏をダイレクトにステレオ2チャンネル・テープに録音した、と書いてある。ウォーリー・ハイダーでは71年の時点で24トラックを2台同期させて48トラック録音を実現させていたというから、75年のトムさんチームはその最新技術をむしろ逆手にとって、旧式の録音方法にチャレンジしたのだろう。

便利なものがいい結果を生むとは限らない、ということに既に気づいていたのだ。スリリングな一発勝負とそのための入念な準備が生みだした、このアルバムを特に愛聴盤としてきた者は、このような「旧式」サウンドにやられる運命にあったのかもしれない。

変態プログレ・フュージョン師匠から4枚ずつお借りしているフランク・ザッパのレコードを聞いているところで、マサオさんが翌日のDJの仕込みに来た。「明日もこんな感じでいくことにしました。」そこからしばらく変態系ジャズものを一曲ずつ、明日録音のアニキと、そのミックス具合や音域具合をあやかや言いながら聞いてゆく。

なんだかトロンボーンがやけに耳に入ってくる。なぜだろう、ファンク〜変態系にはトロンボーンが多く使われるのだろうか。先ほどのZappa & The Mothers ”The Grand Wazoo”(72年)もトロンボーンの嵐だったし。この忘れられたデトロイト・ジャズ”Tribe”レーベルのコンピレーションは、なんとフルートとトロンボーンのユニゾンだ!素晴らしいジャケ。
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「明日の録音の前にさ、気合い入れに来たんだよね。」アニキが言った。そうだ。録音は気持ちの、つまるところ愛の問題なのだ。まんべんなく、過不足なく、ノータッチに愛することなどできない。レコードはそもそも電化製品を売るためのソフトであったという歴史を紐解くまでもなく、レコードは工業製品としての標準化の枠内にある。ソフトがデジタル・データに取って代わっても、電気を使ってスピーカーを震わせていることには変わりがない。

愛とはそのような引き継がれる標準化との戦い、あるいは妥協だ。思い入れや思い込みで、できることしかできずできないこともやってみるけど、そんなメリハリを効かせたような音こそ愛なのではないか。だから嫌われることがあっても仕方がない。

「なっちゃん魔法使いでお父さんは王子さまね。だってお父さんカッコイイしさ、ご飯もたまに作ってくれるし美味しいしさ、それにお母さんのお手伝いもするでしょ、だから愛してるんだよね。」実際には月に1回か2回ぐらいしかご飯は作らないし、しかも選択肢の限られた一品料理である。なっちゃんは励ましてくれているんだと思う。でも「愛してる」なんて言われたのは初めて(お母さんとは毎日言い合ってるらしい)だったのでビックリした。

愛とは全体的で包括的な、言わば仏教的なものでもあるかもしれないが、あるがままの録音や再生は不可能であり、そのままでいいよーではグッとこない。(だから仏教的な作品表現としては削ぎ落とすしかないのだろう。)受け止める愛より投げかける愛である。あるいは励ます愛か。モテない恥ずかしがり屋のダメ男には不得手なところである。


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by barcanes | 2017-01-20 11:52 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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