ダメ男にまつわる思索

1/7(土)

クリスマスと正月兼用のリースを外すと、それを飾っている間には現れなかった客人が来る。それはリースの魔除け効果が機能していたということなのか?解析はやめておこう。

3連休のイベントのない土曜日。ヒマに決まっているこんな夜には思索に耽りましょうか。深夜にファン研部員が「ステレオ・ラボラトリー」シリーズのバリー・ホワイトを持ってくる。待てよ、それオレも持ってるかも、と思ったら同じシリーズのクインシー・ジョーンズだった。日本企画のリマスター&リ・カッティングによる高音質レコードってヤツのひとつだろう。ライナーにはその技術の説明がズラズラと書いてあるが読む気はしない。ここは聞き比べだ。
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バリー・ホワイトは一曲アナログのベスト盤と被っているのがあった。ボーカルのリバーブ感が薄く、ドラムなどがしっかり聞こえて音圧感がある。クインシーの方は”Ironside”の日本盤LPと比べて、やはり中音域がカリッとしている。けど、まあ両者とも大差なし。そんな細かな違いを楽しむだけのレコードである。それをあーじゃないこーじゃないと言って楽しめるのが、ダメな人たちなのである。
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これはこれだけこだわってる技術とメンバーで作っているから「いい音」なんですよ、と主張しているから「いい音」なのかもしれない、と信じさせておいて、お宅のステレオでもいい音で鳴るように頑張って調整してね、ダメだったら高い機材でも買ったらいいんじゃなあい、という電気屋の目論見である。それにまんまと引っかかってくれる人もダメな人だけど良い金持ちである。金持ちは信心深いダメ男でなければならない。しかし金のないダメ男は疑り深い。いや、信心に薄いから貧乏ダメ男なのかもしれない。どちらにせよ、ダメには違いない。

先日も「ダメ」とは何かについて、ダメな友人と有意義な話になった。「ダメ」、あるいは「変態」と言ってもほぼ同義だが、そういうことが通じない人がいると彼は言う。そんなことは一般社会において当然に違いないが、私の店ではそんな違和感を感じることも少なくなった。ダメな人たちしか残らなくなったからである。

「ダメ」という言葉が勘違いされてしまうのは、「ダメ」という意味が広いからで、世の中にはホントにダメな人っていうのもいる。仕事もせずに呑んだくれてるとか、立派な顔して数字のカラクリでお金を巻き上げちゃう人たちとか。殺戮や搾取を何かを守るためだと言っちゃうとか。まあいいや。

僕らが言ってる「ダメ男」っていうのは、一応ちゃんと仕事して、一応フツーに社会生活をしていて、その上で「ダメ男」って言うだけの資格がある人のことを言っているわけです。Funkワードで言うところの"Super Bad"は"Super Good"なんですよ。そういう反意と言いますか、ダブル・ミーニングが分かる人でないと「ダメ」って言えないんです。センスの問題ですねこれは。

どの分野で仕事をしている人も、結局は細かな違いで勝負しているのだと思うんですけど、その有り余った「ちょっとした違い」センスや、あるいは仕事で使いこなせていない「ちょっとした違い」センスを、遊びで使っちゃってるわけなんです。そんな日々のちょっとした差異を、異性や奥さんの表情に敏感に察せないあたりが「ダメ男」たる資格でもあるのですが、対人間には発揮できないからこそ音楽に向かってしまうのだし、特に物質に固定された録音音楽を聞いて音質がどうこう演奏がどうこう言って、話が通じる人たちと話し合えたりするっているのは、言葉が通じるということですから、まあ幸せなことなんですよ。

言葉は空虚に向かっている方が幸福です。そして持て余したセンスを空虚に向かってぶつけているわけですから、これは宗教的なものと言ってもいいのでしょう。ライブ音楽は得てして、音楽を人間と結びつけてしまう。人間が作り出したものなのだから当然でしょうけど、空虚に実存を与えようとしてしまうところから人類の不幸は始まるわけです。

集客力のある音楽も権威や権力を持ち始めてしまう。その辺りが難しいところですね。音楽を音楽そのものの虚しさとして捉えることに、ダメ男たる音楽ファンの求道的な行いがあり、その修験に楽しみを見出すのです。行者にとって歩くことが禅なら、聞くこともまた禅なり。レコード・ディガーの掘り出しもまた仏像の彫り出しと同じく禅なり。そしてそれらを仏道として行わないところに、ダメ男の謙虚な尊さがあるのです。

ですから、時々不思議に思うことがあります。そんな細かな音の違いをあーじゃないこーじゃないと話し合っている時、この言葉を結びつけているものは一体なんなのかと。言葉を担保するものは何もないのです。そこには不思議な共感しかありません。幸福を感じるとは、そういうことなのでしょう。


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by barcanes | 2017-01-13 14:43 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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