K君

1/4(水)

一年に一度か多くても二回ぐらい、たまにやってくるK君は中学の時の同級生だ。僕にいろんな音楽を聞かせて道を誤らせた、いや教えてくれた男。獅子座のO型。近況は報告しないがなんとはなしに話題を見つけてくっちゃべってゆく。酒も飲まずに。これって中学生っぽいな。一晩喋ると結果的に近況がなんとなく知れることになる、という寸法だ。

この日は「習い事」にまつわる子供の才能と親のエゴなんてことからピアノの話になったら、隣にそれまで一緒にCarla Bleyを聞いていたピアノ王子がいた。楽譜がないと音が出せない大人を生み出す音楽教育の弊害を投げかけると、ピアノ王子はなんと応えるか。作曲に興味があったから譜面も何も置かずに自由に弾くところから始めた。それが即興ソロピアノの原点である、と言うではないか。「いいね。」K君は言った。

続いて、毎回同じでは飽き足らず自由に弾きたい演奏者と、毎度同じことを求めがちの観客との縫合はどこか、という問題について。ポップスは歌ものであるのだからまず歌が、あるいは主旋律になりうるメロディや音色があるのならそれが、変わらない部分があるからこそからこそ変化があり得る、という意見に達する。ハードロックだろうとクラシックであろうとジャズだろうと、ポップだなあと思う音楽には、そのような分かりやすい、いわゆる「金太郎飴」のような、口ずさめるような、一見すると変わらないものがあるのだ。

逆に、ポップスとは変わらない部分が大きい音楽のことを言うのかもしれない。その極地はカラオケということになるし、歌が下手ならせめてオケが不変でなければ聞けないということになる。(カラオケポップスはチェーン店のファストフードである。)そして我々の大好きなレコード音楽も、商品でありながら、不変であるのものなのにいつも違って聞こえる、すなわちリスナーを自由にする。という意味では、ポップスもそのようにリスナーの変化に応え得る音楽ということになるのかもしれない。

客の自由のためには喜んで定型を守る、あるいは自由を感じられるような定型を自由に演じる。客のためでありながら自分のためでもなければならない、そんな商売上のバランスということになるのであろうか。だから文句を言われるぐらいがポップスの条件である。定型も分かりやすさもないと意見も文句も言われなくなってしまう。話がズレた。

トーキング・ヘッヅを聞いていたら「Cane'sでこういうの意外ですね」と、旅する自作自演歌手がおびき寄せられた。この2年ほどでようやく80’sの好き嫌いをすっかり克服した私であるが、20代の彼は2016年の音楽も良かったですよと主張する。「ピコ太郎も全部聞くなんてエライ。新譜を聞くべきだよね」とK君が言った。「あんまり聞いてないけど。」

カセットテープで商品も作ってる、なんてオヤジの好きそうな話をして旅人は帰っていった。テープやMTRの話になったので、機材拾いとガラクタ集めを私に教えてくれた元スタジオ・スタッフのK君に最近のライブ録音をお聞かせする。当時さすがに宅録までは教えてくれなかったが、我々は似たような趣向を持っているのだ。

日本人的に素材そのまま感を大事にするんじゃなくて、EQを大胆に使って、迫力あるライブ感を出すべき。デジタルは素直すぎる。アナログはひと味付く感じ。でもこんなに簡単にキレイに録れちゃうんだね、とアナログ育ちのK君は感心してた。

テープが良いとか悪いとかじゃなくて、その持ち味をちゃんと出せてないと思うんだ、とか、ステレオに振ればいいとかじゃなくて、音が前面に押し出される工夫だよ、とか、K君はいつでも適当なんだけど丁寧に述べようとする。それに比べると私はいつも大ザッパだ。ちょっと言い過ぎてしまって少し戻る。

「さっきのヤツはなんか説得力があるね。正しいかどうかは別として。」以前、K君がいなかったら僕はこんなお店とかやってなかっただろうね、と言ったことがある。すると「そんなことはないよ」と彼は訂正した。「オレがいなくても君はこうなっただろうけど、その可能性は高まっただろうね。」

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WATTはECMの下部レーベル。この片面81年のライブ盤は12と1/2という不思議な型番。「12」も81年のライブなので、その続きってことか。チューバの入ったニューオーリンズ風味の、楽しけどちょっとおかしなブルース・アルバム。

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"Diner Music"(77年)はカーラ・ブレイ・バンドとSTUFFの共演盤。カーラ色はあまりしなくてSTUFFのアルバムという感じ。日本語ライナーに「ドラムが弱い」と書いてあるが、このアルバムどうやら、スティーブ・ガッドの影武者として村上ポンタがガッド風に叩いているらしい。いい加減だなあ。そのいい加減さがカーラ風なのかも。


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by barcanes | 2017-01-06 12:44 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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