過剰な強烈さ

12/11(日)

予定していたカオリーニョ藤原さんのイベントが本人の都合によりキャンセルとなり、空いてしまった土曜日。イベントのない土曜日は誰も来る気がしない。前からプロジェクター出して一緒に見ようと言っていたお二人がちょうどよく都合を合わせてくれて、DVD上映会を急遽開催することにした。

テレビのスポーツ中継や映画の上映などをネット上で告知すると、最近はすぐに連絡が来てしまうらしい。完全に情報はチェックされてるということなのでしょうか。どこからどんな連絡が来るのかちょっと興味はありますけども、メンドくさくなってしまうのも嫌なので、クローズドということにした。カンバン消して閉店中に、仲間が勝手に持ち込んだDVDを一緒に見てる、ということなわけだから問題なかろう。

まずは11月末に出たばかりのドキュメンタリー”MR DYNAMITE - The Rise Of James Brown”から。やはりダンス・シーンの脚さばきやライブ映像の迫力に圧倒される。66年のメンフィスからミシシッピ州ジャクソンまで歩いた「恐怖に抗する行進」の最終地でのパフォーマンスや、68年キング牧師が殺害された直後のボストンでの、ステージに上がってきてしまった客たちを説得する場面には、否応なしに感動してしまう。人の期待を感じ取り、期待以上のことをやりのけてしまう超人的な精神力は、音楽でもビジネスでも政治的な面でも、共通して発揮されていたのだろう。

しかし、パンフレットに書かれているように、この映画は「音楽的には最も革新的だった72年まで、政治的に挫折した73年まで」の最も輝かしい時代の描写に留めている。時代が次第にJBが先鞭をつけた功績に追いついていったということなのだろう。その後の凋落や彼のダークサイドについては、2014年の伝記映画「GET ON UP ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」がこれでもかと突きつけてくる。盟友ボビー・バードとの友情と簡単には言い切れない関係を軸に、裏切りや確執に満ちた人生の方にむしろ焦点が当てられていて、見ていて息苦しくなってくる。

共に2014年制作、ミック・ジャガーがプロデュースとなっているこの2作を、並べて見れたことはとても面白いかった。実際の映像と再現シーンと、同じ重要シーンが両方に出てくる。当然それは周到に画策されたものだったのでしょう。いわば2つセットの双子のような作品であると。ミックやるな。Funkの「作り方」についての説明も両方見て深みが増します。無茶苦茶なJBの言いっぷり(楽器は全てドラムだと言わせるシーンとか傑作です)とメンバーたちの受け取り方と。
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豪華3本立ての3本目はドキュメンタリー「ソウル・パワー ザイール’74伝説の音楽祭」(2008年)。これは先日こっそり見ちゃったのでブログにも書きました。上のドキュメントの流れで言うと、74年はちょびっとだけ挫折した後のJBだったのかもしれません。73年は息子テディを亡くし、ボビー・バードも去ってしまった。そう思うとあれは演技ではなくて、親密で真摯な感じのJBが愛おしく感じられます。

そして延長戦の4本目は、84年のアトランタでのコンサート”Live at Chestain Park"。古参メンバーはメイシオ、セントクレア・ピンクニー、スイート・チャールズ、そしてマーサ・ハイ。ファンクとスロー・ナンバーが交互に配置され、50過ぎのJBは動きも減ったが、もはや80年代も十分に楽しめるようになってしまったのである。

私はやはり、60年代後半から70年代半ばまでのFunk全盛期に興味が集中してしまうJB初級の上ぐらいであるが、今回の上映会で一気に興味が広がった。特に"Please, Please, Please"や"It's A Man's Man's Man's World"などの初期のヒット曲や、徐々にFunkに至るであろう時代のスウィンギーなジャンプ・ナンバーなどの魅力が、ようやく初めて分かった気がした。

4作、約7時間のJBマラソンを完走して、我々はその強烈さ重ーく受け止めた。輝かしい面と闇暗い面、先を見て前進したポジティブさと怨みがましい悪魔性、信用と不信、良いところと悪いところ、その何れもが過剰で強烈だった。強烈さこそが才能だ。もう少しどうにかならなかったものだろうか、と思ったりもする。がしかし、どんな人にも良い面と悪い面がある。相殺してイーヴンだというような平均論を主張するつもりではないが、それにしたって悪い部分がなければ良い部分は出てこないではないか。

世の中から一見悪いものを減らしていっても、全体としては決して良くならないのと同じだ。むしろ悪いものは形を変えて現れる。JBは世の悪いものを引き受けて、(彼の思う)良いものに変換しようとした。それがまた良きものと悪しきものを生むかもしれない。しかし少なくとも、それらを前進する力(Funk)として示した。だったら前進しない方がいいのではないか、と考える人がいるのも理解できる。これ以上悪くしたくないと。

しかし、逆説的にはこうも言えるだろう。良いだけの人も悪いだけの人もいないのであれば、前に進むしかないと。悪いものがあるからこそ、前に進む力に変換できると。人は大概がJBには遠く及ばないながらも、何かしらの強烈さを持っているのだと思う。どんなことにも例外はあるが、どんな人でもSex Machineであり、アケスケからムッツリまで度は違えどスケべであるように、誰もがちょっとしたJB、「ムッツリJB」なのだ。でも程度を超えたJBみたいな人っていうのもいるでしょ。やっぱりちょっとメンドくさいよなあ。

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ちなみにこの12月はJB没後10年。Cane'sでは来週12/17(土)に”Voices Inside”でJBとFunkの特集をやります。ディープなレコードが聞けること間違いなしです。ぜひどうぞ。

12/17(土)
「Voices Inside vol. 106 ;JB & more funky stuff」
7pm- No Charge
【DJ】二見潤、大野正雄、関根雅晴
【ゲスト】阿仁敬堂、GEN
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by barcanes | 2016-12-13 04:00 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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