10回目の「かわECM」とソロピアノ

9/22(木)

前回7月の「かわECM」はぶっちゃけ難しかった。夏のジメジメした暑さにECMを合わせるのは、なかなかハードルが高い。その点、秋はジャズを聞くにもいい季節である。お酒も味覚もそうであろう。グルメなことは分からないが、夏にはあまり飲む気がしないウィスキーや日本酒なんかが美味くなってくる。経験上お酒は秋が一番美味い。味わえる季節なのである。

逆に、暑い季節は味わえない。冷やしたり味が濃かったり、薄くて大量だったり、なんにせよ大味である。女の子も夏には肌の露出が目に慣れてしまうが、秋冬にはチラリズムである。ちょっとしたことに色気を感じられる。それが秋、微細なことを味わう楽しみのシーズンインである。

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主宰かわい君が入手したばかりのマヌ・カッチェの2016年盤(ECMじゃないよ)から静かにスタート。スナッピーなスネアと小さなチャイナ・クラッシュの音でいつでもマヌ・カッチェだと分かる、安心のサウンドである。そのまま晴々しく豪勢なドラムものが続いて、季節は春だけでなく叩き起こされるように開幕するのである。

その後はECMには珍しい歌モノから、リバーブとペダルスチールの効いたビル・フリゼール、フィリップ・グラスなど、nonsuchレーベルものを挟みながら、秋っぽい王道ECMで進んでゆく。バンドネオンの入ったものからピアソラのニュー・タンゴなど、やや脱線気味も有機的に噛み合ってゆく。10回やってようやく噛み合ってきたねキミたち。

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フランス録音のキース・ジャレット77年”Staircase”のソロピアノの音は、もはや不自然とも言えるぐらいの超現実的な録り音を聞いてから、ピアノ王子tjrのソロピアノ・コーナー。一曲目が終わるまで、やけにお喋りしてるなと思ったらピアノを弾いていることに気がつかなかったお客さんがいたぐらい、この日のtjrのタッチが素晴らしかった。ECM傘下JAPOレーベルからも出ているダラー・ブランドのピアノを、私は想起しました。

3曲30分超の即興ピアノには前回同様、ピアノの生音にリバーブ音だけスピーカーから出すという擬似教会的なエコーを足して、ややエゲツないリバービーECMサウンドを目指した。先ほどのキースの録音だけでなく、ECMのピアノの音は超自然的な、人工サウンドであることがようやく分かってきた。いわゆる「無音よりも美しい」ということは生より生っぽい、つまり生でないサウンドだ。そういうことは、ECMのレコードばかりを聞いていても分からなくて、合いの手役のtskが茶々を入れることで、そのサウンドの特徴に気付いたりするのである。

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ピアノ王子の今夜のクラシック・コーナーでは、ECMのNew Series、チェンバー・オーケストラもののシューマンを聞いた。クラシックも何度か聞いているうちにしっくりと聞けるようになってくるから不思議だ。今思えば、店を始めた当初の頃は、和モノをかけるだけでも不自然に感じる時代があった。慣れと同時に、自然とそういう風になってゆくものである。我々もクラシックを自然に聞ける日は、案外遠くないかもしれない。

一度帰ったピアノ王子が駅で我々のアイドル嬢に会ってしまったと、一緒にまた戻ってくる。そして再度、深夜のピアノソロ。彼女に捧げる即興2曲。これもまた良かった。私はしっかりとレコーダーに収めた。いつもゲイだバイだとおちょくって遊んであげてる南口の店主たちも、初めて聞くピアノ王子の渾身のプレイに感心して、酒を飲む手が止まってしまっていた。来月には南口の某バーでソロピアノのライブをやるそうだ。どこからそんな情報が漏れたのか、tjrのソロピアノが良いらしいと見つけてくる人もいるものである。いいことである。

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普段やっているポップスのバンドやマジメな音楽仕事では出しきれていない、彼本来のナルシスティックな美意識を、我々はすぐ変態と言ってしまうが、変態こそ天才、天才とは普通じゃないことであるわけで、そんな変態性を出せる表現手段を持つべきなのだ。それを簡単に表に出すべきではないかもしれないし、それをなんとか金にしようとか一皮剝けろとか、そういうわけでもない。無理をすればその無理は自分に降りかかってくる。だから私は天才ピアノ王子のソロピアノを録りためておく。そしていつの日か世に出さなきゃならなくなるかもしれない。当然、私のリバーブ付きで!

今回は祝日前夜でしたが、次回は11/23祝日の水曜日に開催します。


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by barcanes | 2016-09-23 19:10 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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