龍麿石井DUOと、再会する音楽

8/29(月)

私はよく知らないのだけど、龍麿さんの師匠に伝兵衛さんという人がいて、もう亡くなってしまったらしい。今回の共演の石井康二さんは、その師匠の右腕として演奏してきたベーシストである。一緒にツアーに回った昔話とともに、演目には伝兵衛さんの曲が多く選ばれていた。それらの歌を初めて聞く私にはその言葉遣いが面白く聞こえた。逆に龍麿さんが歌う自作の曲には、いつもは乗っているハーモニーがなくて、ぎゅーぎゅー大澤さんのハモりのラインを憶えてしまっている自分に気づいたりする。

石井さんのベースも、当然ながらぎゅーぎゅーさんのとは違う。ハイポジションでのタッチがステキで、弓弾きやベースソロがとてもよかった。石井さんがある歌のワンフレーズだけ、菅原洋一ばりのシャンソン風に気張って歌ったところが、一番盛り上がった。
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2ステージ18曲ほどの終演後には、残ってくれたお客さんや龍麿さんがワイワイ飲んでるカウンターの端っこで、クルマの運転がある石井さんはお水を焼酎代わりに飲みながら、静かに音楽を聞いているようだった。終演後の音楽はメセニーとのチャーリー・ヘイデン、ジョニ・ミッチェルのバックのジャコ・パスなど、「どジャズ」じゃないベーシストもので攻めてしまったので、そろそろ嫌がられるかなと思ったのだが、違う路線が思い浮かばなかったのでチャールズ・ミンガスをかけた。すると「そろそろミンガスが聞きたいなと思ってたんだよ!」と石井さんが言ってくれた。良かった。僕の好きなタイプのベーシストだった。

やっぱりそれでよかったか、と思ったけれど、もう次が見つからないので、ベラ・フレックのデュオ・ライブをかけた。「これエドガー・メイヤーでしょう。やだなー、こんなのかけるなんて。明日から頑張らなきゃ。」と声は笑って顔は嫌な顔してた。帰り際も「こんなの聞きながら帰るの嫌だなー」と言いながら去っていった。やっぱり僕の好きなベーシストだった。
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同じ夜、南口のスペイン酒場では内野くんと江上くんというサックスとベースのデュオのライブがあったそうで、「ライブ終わった後にさ、リクエストしたら演ってくれたんだよ」と店主が嬉しそうにスマホを差し出すんだ。日本語の歌詞でもおなじみのシャンソン曲「愛の讃歌」をいいムードで吹いていた。それで越路吹雪や菅原洋一(今日2回目の登場)のレコードを取り出してみて、突然浜田真理子を思い出した。

浜田さんは「ラストダンスは私に」を(もちろんピアノの弾き語りで)歌っていて、私の持っているCD(mariko live〜こころうた〜、2004年)ではその前に「Johnny guitar」からの「粋な別れ」という驚愕のメドレーをやっていたりする。その他、「柔」「座頭市」など、斬新かつ見事なカバー・センスを見せる。それぞれ裕次郎、ひばりちゃん、勝新の、王道かつ名曲中の名曲だ。思えば、私の昭和歌謡リバイバルはここから、浜田さんの再評価によって始まったのだった。このお店で和モノのイベントが続くようになったのも、無関係ではないだろう。
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ついそのまま、お客もみんないなくなっても、好きだった悲しすぎる歌たちを聞いてしまった。好きなのは悲しすぎる別れの歌ばかりなので、悲しくないときには聞けないのだから、しばらく浜田さんのCDを聞かなくて済んだということは幸せな、わかれのすくない年月を過ごしているということになるのだろう。

しかし特にヒドイのは「胸の小箱」という曲で、

「けれども もしも そのときが 来たら
そっと 開けましょう 胸の小箱を
しまっておいた さようならの ことば」
(アルバム「夜も昼も」2006年)

私はこの頃から、さようならということに臆病になって、人と簡単に出会わなくなったのかもしれない。酒場の仕事は出会いと別れで、これっきりもう会わないのならば、そもそも出会わないほうが良いではないか。たくさんの人が去って行く。酔って喋ったことのように忘れてしまう。これまでも、そしてきっとこれからも。別れが寂しすぎるから、私はお客の顔を憶えない。たぶん、まだ出会っていないままにしているのだろう。

しまっておいた、あるいはまだしまいこめていない、いろいろなさようならを思い出して、泣けてしまった。
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音楽は、レコードはまた聞ける。出会ったら別れなくていい。また再会できる、ということが希望になるからダメ男たちはレコードを溜め込むのかもしれない。


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by barcanes | 2016-09-07 03:29 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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