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よく分からなさ

7/18(月)

イベントのない連休中日の日曜日だ。言わずもがなの夜。ようやくいらっしゃった客人がレイトショーでコッポラの「地獄の黙示録」を観てきたと言う。私は学生の頃にレーザーディスクで観た。よく分からなかった。その分からなさが良かったような気がした。それでそのサントラを買ったんだと思う。客人も、大人になって観てもやっぱりよく分からなかったと言う。

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コッポラが蓄えた資金を使い果たし、さらに大赤字を残してまでもこの作品を取りとめのない、まとまりのつかないものにしたのは、むしろそれが目的だったんじゃないかと思えるほど、それは浪費であり、わけの分からないもの、それが戦争であり、戦争を分かりやすく描くことに対する拒否だったのではないだろうか。

分かりにくいものを切り取って分かりやすくすることとは、何のためになるのだろうか。それは何かのプロセスとしては必要なことかもしれない。何か大きなものを理解するためには、分かりやすいところから始めなければならない。しかし分かりやすさは時に、往々にして毒となる。

それはその分かりやすさが満足を伴って目的を失う時なのだろう。西洋数学で全ての事象が解析されるわけではないし、アメリカ主義も選挙の勝ち負けも何も解決はしない。分かりやすい文言を唱えれば心の満足が得られるかもしれないが、そこで終われば他の不満を生むことになるだろう。

よく分からないことをそのままに、よく分からないこととして捉えたい。分かりやすく捉えようとしても無駄なのだ。我々に分かっているヒントは限られていて、頼れる道具は数少ない。言葉は分かりやすい理解のための道具ではなく、分かりにくさを分かりにくいままに表現するのに精一杯である。

会話のボールは相手に届いたり届かなかったり、荒れ球になったり打ち返されたりしながら、次第に言葉少なになり、分からなさがその場に漂ったままとなる。酒場はそんな場所でいいと思う。何かが分かったつもりでも、次の日にはだいたい忘れてしまうし。

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DOORSは好きになれなくてあまり聞いてこなかったけど、オルガンとキーボード・ベースなど独特のサウンドに興味を惹かれる。これはカミさんのレコードで、若い頃には一人暮らしの部屋でドアーズのレコードが回るのをずっと眺めていたらしい。暗いなあ、もう。


by barcanes | 2016-07-19 23:04 | 日記 | Comments(0)