追悼なんて

6/2(木)

昼前に訃報を受け(そして前夜にだいぶ飲み過ぎて)グッタリしてると、妻となっちゃんは地引網で遊んでもらった海に行ってお別れしてきたと言う。海に向かって「Tさーんありがとう!」って叫んできたんだって。「どこかで区切りをつけないとね。やってられないから。」悲しい顔をしていると娘も分かっているようで、「お父さん元気出して。なっちゃんがいるから大丈夫。」でも区切りがつくまでには、まだ何度か泣かなきゃならないだろうし、何度も何度もあの人の話をしなきゃならないだろうということも分かっている。

夜、店に行って、スプリングスティーンの”The Ghost of Tom Joad”をかける。Tさんが最後にこの店に来た時、スプリングスティーンのDVDを見てて、「応援団だね」と言ったのはTさんだった。そのことを少し遅れてブログに書いてたのが月曜の深夜。その頃、Tさんは戸塚駅で倒れたらしかった。藤沢まであと少し、辿り着かなかった。でも確か、戸塚はTさんの出身地だったはずだから、それもありだったのかもしれない。死臭に満ちた、と書くと言葉が悪いが、僕らの応援団が描くこのアルバムの死の気配は、僕らの精気に溢れたチアリーダーに突然訪れた死を受け止めきれない、この気分にそぐうものだった。
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平日の早い時間には珍しいアニキが来たので、なんとなく引っ張り出したマイケル・ジョンソンの1stをかけた。落ち着いたトーンが悲しい時にもそうじゃない時にもいつでも優しいアルバム。そのうち訃報を受けた人たちが一人二人とやって来た。先のアニキも、実は連絡したわけじゃないのに訃報を知って来たと。カウンターに座った何名かが、特に知り合いというわけじゃなくても、この店とTさんというターミナルでつながっている。特に偲びに来たわけじゃなくても、偲び切れるわけなんかないのだけど、とりあえず足を運ぶ場所としてこのような店は存在する意味があるのだろう。
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何を聞いたらいいですかね。「何でもいいんですよ。追悼するとかそんなんじゃなくていいんです。」別のアニキが言った。Tさんの好きだった洋楽などを聞いてみたりしたけど、ちょっとしっくりこなかった。昨晩聞いたハイファイセットは昨日ほどヒドくはなかったけど、「卒業写真」がこんなにグッときてしまったのは初めてだった。「あの頃の生き方を/あなたは忘れないで/あなたは私の/青春そのもの」あなたは私なのかあなたなのか、人称はこういう時には入れ替わり可能になり、生と死のラインは曖昧となり、はっきりとした違いだったものがはっきりとしなくなるのだろう。

それで、Guy Clarkの”Old No.1”を聞く。ついこないだ、これを聞いてた時にもTさんがいた。”Texas Cookin’”を聞きながら、Tさんのお土産の広島焼きを食べた。アニキも一緒に食べたよね。歌詞なんかよく分かんないのに、これはやっぱりヒドかった。泣けてしまった。

手をつけないままの生ビールのグラスを横に置いて、飲んでる輩もいた。僕はそういう象徴行為があまり好きじゃないんだけど、他のみんながそのTさんのいつも飲んでたグラスに向かって杯を傾けるのを好ましく感じた。そのうちお通夜の知らせが届いて、まだ何も知らせていない人たちに連絡しなくてはと思ったが、文面を何て書けばよいのか、考えられないので明日にすることにした。

土曜の夜に近所の斎場に決まった。最初の知らせからずっと連絡をしてくれているTさんの会社の後輩Sさんは何度かお会いしている人で、楽しいのが好きな人だったから通夜の後は湿っぽいよりも楽しくやりましょうと、メールのやり取りをしながら、Tさんの心意気の継承をしてくれている人がいてありがたいと思った。昔Tさんの先輩で「俺は銀座で1億使った」というモーレツなオジさんがいて、引退後によく来てくれていた。たしかに、毎日1万円30年続けるとそうなる。その先輩が「T君は昭和のスタイルの最後のモーレツ・サラリーマンだよ」と言っていた。最後までそれをやり切っちゃったんだ。

追悼なんてしなくていいんです。ニューオーリンズには葬儀の後のパレード音楽、セカンドラインがある。Tさんのセカンドラインをやろうよ。楽しくやったって、どうしたって涙は流れてしまうんだ。


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by barcanes | 2016-06-03 01:46 | 日記 | Trackback | Comments(0)
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