人気ブログランキング | 話題のタグを見る

新進気鋭のアメリカン・スピリッツ

先日ご紹介したお酒が入ってきた。シカゴ近郊のエヴァンストンという町で2011年に設立されたという新しい蒸留所、「F.E.W」はアメリカ禁酒法のきっかけを作ったという運動家フランシス・エリザベス・ウィラード女史の頭文字からとったそうである。彼女はこの町の出身で、女性参政権の確立にも尽力した立派な方だそうだが、そんな名前を付けるあたり、この蒸留家のヒネクレた感性がうかがわれる。
新進気鋭のアメリカン・スピリッツ_c0007525_4111112.jpg
その通り、普通じゃない酒である。このような面白い酒に出会えることはなかなかない。私は一発で気に入ったのである。まずは「ホワイト・ウィスキー」。樽に入れてないバーボンである。切れ込んでくる若々しいトンガリは粗悪なアルコールとは一線を画す、手造り感のある良質のアルコールだ。良質とは無味で純度の高いことを言うのではなく、雑味を含み、どこか肌触りに丸みがある。トウモロコシ70%の軽い臭みの後に優しい甘みが口に広がる。

そのバーボン原酒をベースにしたジンが「アメリカン・ジン」。通常のジンのほとんどは連続蒸留によるウォッカのようなものをベースに造られているが、これは全く違う。トウモロコシの臭みがジンのフレーバーの底辺にある。その上にジュニパー、バニラ、ホップなどのスパイスが軽めに効いている。イギリス・ジンともオランダ・ジンとも違う、これはちょいとヒネクレたアメリカ・ジンだ。

それを樽に入れて熟成させたものが「バレル・ジン」。白い「アメリカン・ジン」に潜んでいた華やかな香りのつぼみが樽との化学変化で開いている。花のような香りが素晴らしい。この4種の中では私の一番のオススメはこれだ。

そして酒販店やバー関係などで評判が最も良いという「ライ・ウィスキー」。ライ70%、新樽の木の渋みが効いているが、酒の力強さとのバランスがでうまくまとまっている。創業から2年しか経ってないのに「4年以内」と書かれているは何かのバッティングがされているのかもしれないが、余韻には熟成感ではなく若い青っぽい味がスパッと切れ込んでくる。

4本に共通して言えることは、若さ、ワイルド感、アグリコールのような青っぽい臭み、そしてなんと言っても手造りの柔らかい肌触りがある。アクが強いが付き合ってると好い奴、みたいな酒である。

音楽で言えば、60年代初頭のロックを感じさせ始めるR&Bといったところだろうか。我々がド渋だと思って聞いているそれらも、当時二十代そこそこの若者が青い勢いを振り散らかしてシャウトしていたのだ。やはりこの酒たちには、シカゴに上っていくようなアメリカ南部のインディーズ・レーベルの音楽が似合うかもしれない。
by barcanes | 2013-09-17 04:09 | お酒 | Comments(0)