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色気のない話

今日は偶然にも「P.A.同好会」のメンバーが顔を揃え、師匠から位相や極性についての講義を受ける。寄贈してもらったテスターをあちこちに突っ込む実習もあり、数値の変化にいちいち盛り上がる。逆相でハウリングをキャンセルする技術や、Grateful Deadの実験的スピーカー・システム「Wall Sound」など、今日もまた色気のない話をしてしまいましたね、と師匠。

そういえば私の父は電気会社の研究者で、ソナーなんかの開発をしていたはずだから、位相や波形の話なんかで仲間と盛り上がったんじゃないだろうか、と思うと血は争えんと言うか。色気のない話もいいじゃないですか。それにしても音楽は色が付いて音楽、それ以前の「音」にはやはり色は付いていないのかもしれませんな。

色気なしのサウンドにこだわっているのは、ホントに一部の人だけ。音楽の世界の中だって、そんなことを気にしているのはごく少数であろう。世の中の役に立つテクノロジーに比べたら、クソの役にも立ちやしない。聞こえりゃいいんですよ、そんなもん。とは言ってもね、面白いし難しいです。答えのない世界です。

突き詰めれば電気を使わず、生の音楽がサイコーです。ではなぜ、電気とP.A.が必要なのでしょうか。それは多くの人に届けるためです。届けるべき人がいるから、届けるべきものをなるべくそのままの姿で届けようとしているのです。未だ見ぬ遠い人にも音楽を届けるために、色気のないサウンドの世界が、一部の人々によって追求されるのでしょう。

それはとても誠意に満ちた行為だと思えます。「そんなもんインチキだ」と師匠は言っておりますが。マイクで拾った音は、その時点ですでにインチキなんですね。本物と偽物の間で悩み、時にインチキの方を愛してしまったりもするんですね。僕らダメ男というものは。そして本物には届かない。ああ、それはまさに愛なんですね。

ガラッと店のドアを開け、入ってきたアニキが開口一番「あ、また女の子が入れないような話してるんでしょー」と。どの世界でもそうでしょうが、誠意というのはなぜに女子には受け入れられないんでしょうかね。ねえ師匠。
by barcanes | 2013-09-02 00:51 | 日記 | Comments(0)