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直接手渡されるもの

最近ブログが音楽の話ばっかりでつまらん、とお叱りを受けた。確かにたまにはお酒や飲み人の話も書かなきゃなーと思います。

と言っておいて、今日も音楽の話。先日ペダルスチール奏者、宮下広輔が持ってきてくれたサンプル盤を聞いていたら、ちょうどFacebookで「メジャー・レーベルから発売されることになった」というニュースが目に入ってきた。そうか、そうだったのか!メジャーがなんぼのものか分からないが、なんか嬉しい。多くの人の耳に届くだろうと思えば、素直に嬉しい。

PHONO TONES」は、彼がいくつも参加しているバンドのひとつ。ドラム、ベース、キーボード、ぺダルスチール、というインストの4人組。彼とは数年来の付き合いで、数え切れないくらいうちで演奏しているし、一緒にバンドみたいなことをやったこともある。

先日も紹介したばかりの「きわわ」のにもウリョン君のアルバムにも彼は入っている。売れっ子だ。もちろんペダルスチールという楽器をやる人があまりいないということもあるだろうけど、彼の成長も著しいし、何よりも、彼の存在がどのバンドにも、彼らみんなの音楽にとっても不可欠なものになっているのだと思う。

そういう彼らの作品やサンプル盤を本人たちから直接手渡してもらうということが、最近はとても嬉しいことなんです。PHONO TONES「Loose Cruse」は8月7日にキューンミュージックから発売予定。宮下が弾きまくっています!

もう一枚、少し前にもらったサンプル盤はまだお会いしたことのない橋本拓也というシンガーソングライターのアルバム「FREE ENERGY STUDY」(FREE ENERGY RECORDS)、こちらも8/7発売だそうです。この作品も、長い付き合いで宮下の仲間でもある田尻有太がピアノやアレンジやレコーディングもやったというもの。暖かい声とアコースティックな楽器の音も優しいポップ・アルバムになっています。
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さて一方、お酒の話って大概が二次情報なんですね。出所は発売元や広告だったりして、評論家の話もまあマユツバなもんです。生産者や生産者に会ってきた人の話は面白いですけどね、自分も会いに行ってるわけではないから、そんな人の話は面白くもないわけですよ。

酒は飲まなきゃ分からん。でも飲めば分かる。いろんなものを比較しながらたくさん飲んでいけば分かっていきます。何が美味しさで、美味しいとはどういう味や香りのことをいうのか。そして美味しさにはいろいろな美味しさがあるということ。

ですが、分かり合えるっていうのはなかなか難しい。酒を飲んで分かり合えるのは酒の味じゃないんです。酒の向こうにあるものです。僕らが直接取り扱っているのはそこです。ですから酒の味は分かり合うものではない。音楽で言えば僕はお酒に関しては完全にリスナーなんですね。音楽を聴きながら、音楽の向こうにあるものを聞いているわけです。

それでも分かり合えるっていうのは嬉しいことです。10年あまり店をやってきましたが、そのように味を分かり合えるお客さんは数えるほどしか作れませんでしたし、マニアックな酒の世界にも馴染めなかったんですね。

生産者と関わることもあまりできませんでした。生産者と消費者をつなぐ仲介者と思ってやってきましたが、やはりちょっと生産者が遠かった。バーというのはどこか批評家のようなところがあり、どれに対しても中立で客観的でなきゃいけないところがあるんだと思うんです。だって自分が関わったものはそれだけでも美味しく感じちゃうでしょう。それにお客さんは客観的なものを求めるものです。お酒はなかなか主役にはならないんですね。

ですから、酒は美味しければそれでいいのだと少し開き直ってしまい、それはそれで少し楽になりました。でも音楽の方は生産者たちと関わっているので、美味けりゃいいっていう、リスナーってわけにはいかなくなったんですね。美味いものを作っていく手伝いをしていかなきゃいけない。

生産者から直接手渡される酒や食材が美味いように、音楽も直接手渡されるものは美味しく感じます。時々ジャンクなものや大量生産品も食べたくなりますが。でも人に紹介したいもの、売りたいものというのは、直接手渡されるものなんです。

他人に淹れてもらったコーヒーが美味しいのも、バーで飲む酒が美味いのも、それらが直接手渡されるからなんでしょう。美味く感じられなかったら、それはアナタが選んだバーや相手を間違えているということになるでしょう。
by barcanes | 2013-07-02 01:56 | 日記 | Comments(0)