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「TAJIROCK」:Out & Inside

もう何度目かになる「TAJIROCK」は、2009年にピアノ田尻有太を中心にして始まった。学生時代の仲間や同世代のミュージシャンが集まっていたのが、今回はとうとう昔の仲間の助けを借りずのイベントになった。田尻に友達がいないなんて言ってないよ。普段東京で活動することの多い田尻が、なにか藤沢っぽいことをしようと考えてくれてのこのイベントなのだ。

今回がCane's初登場の藤森翔平君はラムチョップスというバンドをやっているそうで、今回は弾き語り。ごく近所に住んでて、僕の昔のバイト先の大分下の後輩でもあり、そのバイト仲間たちがたくさん見に来てくれた。ハナレグミ・バージョンの「People Get Ready」をカバーしたのが印象的だった。やはりこういう時、カバーというのは大事だと思う。初めて聞くミュージシャンの印象のとっかかりになる。
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続く、アップライト・ベースの大澤"ぎゅーぎゅー"逸人さんと田尻ピアノのデュオは、辻堂の北口と南口に住む二人の「The 辻堂対決」という名前以上に良い対決となり、予想以上に良いものになった。ジャズの人ではない二人がジャズっぽいことをすると、ジャズのインタープレイはまさにインタープレイになる。ジャズの人がジャズじゃない人と共演すると、例えばラテンの人とかブラジルとかワールド系とか、そういう非ジャズのジャズっていうのが結構僕らの聞きたいものなのだ。

この曲の展開はこの後どうなっていくんだろう、という興味を常に喚起させ、ジャズのイディオム的なものに頼りも回帰もしない、スリリングでパッション溢れる演奏だった。これはある種のフリージャズと言うこともできるだろう。
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トリをつとめたヤクも、このわずか2、3ヶ月の間の成長を感じさせるような逞しい歌いっぷりで、きっと見聞きしたいろいろなものからの影響をしっかりと自分のものにして、熱さとしてそれを表現できるようになったのではないだろうか。これで我々にはまた新しい目標ができた。ヤクのライブ録音をしてリリースするのだ。そのためのスタッフは揃っている。
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思ってた以上にクオリティが高いイベントだったねと思ったのは僕だけではなくて、終演後も残った人たちで話が盛り上がった。音楽が好きで、細部にこだわる人というのは、それだけでこの世界の中からすれば外部の部類なのだ。つまり「Out!」というわけである。音質がどうこう言ってる時点であなたはOutなのだし、しかし世の中にはそういう人間が必要なのだ。必要なのだけれど、我々はOutであることに気づいていた方がいい。

私のバーに集う人たちも、気づけばOutな人ばかり。それは世のInsideな人たちとの関わりに疲れてしまったからで、OutはOut同士でいる方が楽しいし落ち着くのだ。しかし、Insideとの関わりなしには我々も生きていけないのは確かなこと。我々はみな外国語を喋っている外国人のようなものだ。必要なのは翻訳、OutとInsideを受け渡しする通訳のような人なんだろう。
by barcanes | 2013-05-05 03:37 | 日記 | Comments(0)