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ミュージシャンは自分の音を聞くことができない

深夜にライブとその打ち上げも終えたミュージシャンとPA屋さんなどなど。ひとしきり騒いだ後、今日のライブに少し納得のいかないところのあったミュージシャンは、いつの間にか涙を流していた。曲はJackson Browneのライブ・アルバム「Running On Empty」の中の「The Load-Out」がちょうど流れていた。裏方の人たちみんなこの曲が好きなのだ。口の辛いPA屋さんも厳しいことを言ってくれる。優しいPA屋さんは優しいことを言ってくれる。オレはこの人たちが食えるようにしなきゃいけない。オレたちミュージシャンはこの人たちがいないと生きていけないんだぞ。

ミュージシャンは自分たちが出している音を客席で聞くことは一生できない。自分だけが他人の聞いてる自分の声を聞けないように。だからPAを信頼するしかない。あるいは出ている音を想像するしかないのだ。

酔客がひとり、このミュージシャンに絡んだ。僕がこの人も歌う人なんですよ、なんて言ってしまったものだから、じゃあこの場で歌え、オレは率直な人間だから聞きたいと思ったら今ここで聞きたい、と挑発する。やれやれ、メンドクサいことになった、ライブの後だしそんな気分でもないだろうに、なんとか治めないと、と思っていると、ミュージシャンは「しょーがねえな。ギターを借りるよ」と奥から取り出してきて歌い始めたのだった。

チューニングを直す間もおかずに歌い始め、狂いにも惑わされずにそのまま歌い切ってしまった。間近で聞いていた酔客はすっかり率直に感激していた。こう本気で歌われてしまったら。こうして一人ずつファンを増やしてきたのだし増えていくのだろう。

最後にナターシャ・セブンの「陽の当たる道。」を聞いた。「高石ともやがオレのギターの最初の先生なんだよ」とミュージシャンは言った。僕この「107SONG BOOKシリーズ」、だいたい持ってるんです。「いつか高石さんをステージに呼びたいんだよね。手紙を何度も書いてるんだ」と。呼べるに決まってますよ。裏方みんなで盛り立てるに決まってるじゃないですか。
ミュージシャンは自分の音を聞くことができない_c0007525_22381525.jpgミュージシャンは自分の音を聞くことができない_c0007525_22383535.jpg
by barcanes | 2013-05-04 22:22 | 日記 | Comments(0)