「ほっ」と。キャンペーン

スマホ等でご覧のみなさま。

簡単なイベント予定など、お手数ですが、下の方にある「その他のメニュー」から飛ぶようになっております。
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# by barcanes | 2018-01-28 09:46 | お知らせ | Trackback | Comments(0)

SP盤に聞き倒される

2/11(土祝)

スタート時間の7時には客はまだ一人しかいなかったが、心配はいらないさ。15分遅れで始まると徐々に集まり始め、最終的には計30名ほどの盛況となった。予定していた関根さんが体調不良で来られなくなり、エースの一人を欠いたという点では完璧さを失ったかもしれないが、それも心配には及ばない。一人1時間ずつの3時間のセットということになった。
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トップバッターは阿仁敬堂、略してアニーさん。日米SP歌姫対決ということでビリー・ホリデイVS美空ひばり。59年没のビリー・ホリデイはまさにSP時代の人。1930年代のアルバム(SP盤が通常4枚あるいは5枚入り)の収録曲に後々のスタンダードでないものが聞けるのは、当時のティンパンアレーの人気曲が他の人たちに使われ、その残り曲だったから、という指摘が興味深かった。つまりホリデイのコンボは当時の若手であり、メロディよりもソロで勝負しようというジャズメンたちだったから。そのスタイルが後に与えた影響は図るべくもない。なんてったってビバップ以前である。

対するひばりちゃんはレコードデビューが1949年(昭和24年)の「河童ブギウギ」。1915年生まれのホリデイから22歳違いの37年生まれ。なんと12歳。ブギの女王・笠置シズ子にブギを歌ってはいけないと言われるほど上手にブギを歌いまくって(後に和解)、「あきれたブギ(50年12月)」「泥んこブギ(51年4月)」などの他、ブギ・ブームが去ればマンボ(「江戸ッ子マンボ(54年3月)」)やサンバ、チャチャチにロカビリー、ルンバにジャズと洋楽ものを片っ端から総なめにしてゆく。このあたりの「リズム歌謡」についてはまた後で。とにかくひばりちゃんの20歳過ぎまで、最初の約10年はSP時代なのである。(ディスコグラフィはひばりちゃんの公式ウェブサイトに詳しい。)
http://www.misorahibari.com/discography/index.php

やはり日本側の録音はオケの突っ込みが甘い気がする。当然、歌がメインであるから歌が聞こえればいいのだが、周りのサウンドのメリハリがないのは今に始まった話ではないのだろう。SPの録音は何を聞かせたいかの優先順位がハッキリしている。歌とソロ楽器が前。アンサンブルやドラムは後ろ。米側は(一概には言えないが)昔から低音を拾っているように思う。低音感受の文化的な違いとは何なのだろうか。

2番手は御大登場。文屋章師匠。ジャイヴやジャンプにTボーン・ウォーカー。New Orleansにシカゴ・ブルーズ。スリム・ゲイラードのライブ盤にはビックリした。歓声と拍手から始まり、何か面白いアクションでもしているのだろう、笑い声が聞こえる。もう既にテープがあった時代なのだろうか。それにしても盤質の極めて良い、ノイズのない盤ばかり。そして曲は名曲ばかり。こうなるとSPは無敵のメディアである。ピッカピカの新品の旧車のスポーツカーである。エンジンの爆音が唸っている。当時の新譜でもこんなにいい音で聞いた人は多くないだろう。こんなのタダで聞いちゃっていいんだろうか。

3番手には我らがVoicesを代表して大野マサオさん。西海岸からテキサスを通ってルイジアナへ、一度戦前ミシシッピ・ブルーズに辿って、そこからセントルイス、シカゴへと北上する。ゲイトマウス・ブラウンからアイク・ターナーまで。激烈エレキギターが炸裂。やはり50年代はエレキが最新の武器だった時代だ。テレキャスやストラトのシングル・コイル・ピックアップが、フェンダーのピカピカのイクイップメントがギラギラと輝いている。対するギブソン勢はやや大人な、上品な印象だ。主役は歌と同等か、あるいはフルパワーの音量で迫ってくるギター、そして息づかいそのものを増幅したようなハーモニカ。ブルーズ・ハープはSPの特性に最も適しているのではないかと思える。

文屋さんのセット途中から音量は上がっている。SP盤は音量を上げてもうるさくない。高音域がそもそも出ていないらしいし(スクラッチ・ノイズ対策で5kHz辺りでハイカットした)、アンサンブルとしても上の方が空いている。中音域に音が密集して聞く者に圧を与え、音の隙間にドラムやホーンセクションなど後ろの音が聞こえてくる。ハイは空気の音だ。だから音量を上げれば濃密な空気に包まれることになる。前の音はより前へ、後ろの音はより後ろに距離も増幅され、ギターアンプから出てきた音が空気に溶け込んで消えていくまでの音が聞こえる。ピアノは2倍はあろうかという巨大な躯体を現す。トランペッターがソロを取るためにマイクに近づいてくる。シンバルは後ろの方で控えめに鳴っていて、ドラマーはスネアで主張してくる。ベースは文字通り低音でボンボン鳴っている。

それらは決して解像度が低いとは言えないが、確かに小さい音ではその良さが分からない。飛び出す絵本のように、音量を上げるとミュージシャンたちが飛び出してくる。録音スタジオがこの空間にそのまま幻出する。それにしてもCHESSレーベルの録音とミックスは、この時代に群を抜けて素晴らしい。おそらく高音域をうまく使う術を得たのだろう。プレート・リバーブの実験的な使い方も面白い。

10時半ぐらいには本編が終了。そのまま延長戦がさらに3時間ほど続いた。浅見さんとマサオさんは持てるSPをかけ続けた。どんだけ持ってるんだ。ホントにこんなの聞けるだけで幸せだ。みんなチャージ払った方がいいよ。その後の一週間しばらく元気が出なかったのは、きっとこの幸福感の喪失からだ。そうに違いない。録音したものを連日聞いていたけど確かにちょっと疲れるだけだ。もし明日死ぬと決まったら最後に何食べたい?っていう質問あるでしょう。食い物に興味のない僕はSPを聞かせてもらうことにする。そしたらそのまま死ねそうな気がするわ。

最後は私の手持ちのSPも何枚かかけた。マリリン・モンローの色っぽい声、ヴィクター・ヤングの映画音楽のドリーミーでロマンチックなサウンド。歌劇のオーケストラも良かった。森永のエンゼル・チョコレートのCM曲、コロムビア・オーケストラのジングルベル、イヴ・モンタンの「枯葉」も良かった。この辺りはノイズもヒドくてノスタルジックな印象になってしまう。スウィート・ノスタルジー。感傷はスウィートで退廃的。私は古いものが好きだが懐かしむのは怖い。だって今の時代に生きていくのが嫌になってしまうから。

だからSP盤を聞くのも、昔はスゴかったんだよって言いながら昔は良かったっていうことだけにはしたくないとは思う。良さとともに良くない点があったから消えていった。どの時代にも良さと悪さは両面である。どんなものにも良くなる一方ということはない。でも何かが良くなるという希望でもなければ生きて行くのは辛いから、人は何かを良くしようとして同時に悪さをもまき散らして生きてゆく。人が善人であるためには全ての人が悪人でなければならない。誰かの悪を誰かの善が補完し、それがまた悪を生み、またそれを良くしようと循環していく。

片付け終わって、浅見さんが美空ひばりのコンピ2枚組CD「ミソラヒバリ リズム歌謡を歌う」をかけてくれた。寝てしまっていたアニキが起きてきて、戦後の日本の洋楽受容とそれをただ受け入れるだけではなく、なんかいろいろ混ぜこぜにして打ち返していたひばりちゃんとそのスタッフたちの意気に想いを馳せてみる。勝戦国アメリカの文化に魅せられた、あるいは洗脳された人々のすぐ後に我々がいる。なぜ私(や周りの人たち)がこんなにアメリカ音楽が好きなのか、かねがね不思議であった。なぜこんなに一生懸命にアメリカ音楽を理解しようと努めてきたのだろう。ただ自分の楽しさや知的欲求を満たすためかもしれないが、それにしたって何かを打ち返しただろうか。最後は「人間のあらゆるあり方を積極的に肯定する」というFunk本25ページの一文について答えのない話で朝6時半、タイムアップ。

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重要文化財級のSPを事もなげにセットする文屋師。

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興が高じてハープを取り出しベンドするマサオ”Blow Your Harp”オーノ。SP盤と同じ音がしてた。

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ブックレットにある湯浅学の文章より書き抜き。「自分のスタイルに強引に引きずり込んだような解釈がひとつもないのだ。」「リズムにのる、ということはビートをつかまえる、ということである。リズムを取り入れる、ということはビートを解読する、ということである。」「日本語をリズムにのせているのではない。リズムを日本語にのせているのだ。自分自身のビート感で様々なリズムを”日本語化”してしまうのだ。」


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# by barcanes | 2017-02-19 20:16 | 日記 | Trackback | Comments(0)

2月も半ばの週末のイベント

もう2月も半ばだというのに、2月のイベント予定が出せてません。ダメだなあ。どうしょもないなあ。とりあえず今週末のイベントのご紹介です。

2/17(金)
Free Friday #22
Genさんの「Gen金!;こんにちは青春の光」
9pm- No Charge
【カウンターDJ】Gen(Three Amigos)

Genさんの金曜日「Gen金」2回目は、Genさんの“青春のレコード達”ということで、レコードを買い始めた中学生時代から大学生時代までの音楽遍歴を辿りながら、レコードにまつわるエピソードを盛り込んでいきます。というわけでお聞き逃しGen金でお願いします!
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2/18(土) 
”Voices Inside vol.108”
featuring FUNK UP BRASS BAND ~NOLA Special~

start PM7:00 
charge:愛の自由料金制(投げ銭)
Disc Jockey: 関根雅晴、大野正雄、二見潤
Special Guest Live : FUNK UP BRASS BAND

※ライブはPM8:00からとPM9:00からの2セットを
予定していますので、お見逃しのないようお願い致します!

Voices Inside、今月はライブと共に盛り上がりましょう!
聖地New Orleansはマルディグラ目前。
という訳で、我々も黙ってはおれません。
今月はNew Orleansを特集します!

そして、スペシャルゲストにN.O.のストリート臭プンプンのFUNK UP BRASS BANDをお迎えして、
マルディグラ感たっぷりでお届けします!
当日のBar Cane'sはまるでトレメの夜のようになる事でしょう!お楽しみに!
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2/19(日)
「アイリッシュ・セッション #29」
4pm- No Charge

フィドル椎野さん主宰のマンスリー・セッションです。お気軽にご参加ください!
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それでは最後に、土曜日の”Voices Inside”に出演のFUNK UP BRASS BANDの動画をどうぞ!みなさん来てくださいね!

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# by barcanes | 2017-02-19 00:23 | イベント | Trackback | Comments(0)

逃げるのはいつも僕さ

2/4(土)

ピックアップがネックの根元とピエゾと2つ付いてるエピフォンの「J200」モデルと、白く染めたボサボサ髪の太一さん。新曲2曲、BBB時代の「プライベートハネムーン」など昔の曲、普段やらない曲やうる覚えの曲などチャレンジングな内容でした。いつも集客力のない当店ならでは、それでも何度も来てくれる太一さん。普通にやっても面白くないと考えてくれてのことでしょう。

店主としてはチャレンジングなことができる場所として捉えてくれて、チャレンジングな場として使ってくれることは何よりです。個人的には「夢は逃げない 逃げるのはいつも君さ」と歌われる新曲の「青春」が響いてしまいました。逃げたくないから夢を持たないようにしていたのかもしれないし、夢がないからいつも逃げてしまっているように思われるのかもしれない。どちらにせよ逃げるのが青春なら、青春は一生続くのだろう。

たまたまいらしたお客さんが最前列で大泣きしていたらしい。理由は分からないが故郷を思い出してとのこと。太一さんはいつも客を泣かせてやろうなんて思ってやってないそうだが、それでもお客さんにはたいてい、各々泣ける曲泣けるフレーズがあったりする。それは私には何故か「俺の自転車はまた持っていかれちまった」だったりするのだが、今回はその曲はやらなかったし、それに泣ける感じではなかった。余計な盛り上げもなく、拍手や歓声を求めるでもなく、わりと淡々とやっていてそれがとても良かった。全13曲、90分のライブでした。

最前列のカップルは10年ぶりにCane'sに来たという、当時は学生だった男性の夫婦。結婚記念日で子供を預けて来たという。だいぶ顔つきが大人になってて気がつかなかった。お店があって良かった。なかったら寂しいだろうな。

終演後から太一さんに会いに来た客が集まり、深夜には早めに看板を消した後にも二人組ずつ数組のお客さんがそれぞれよく喋っていた。することもなくなって、私は今日から読み始めた「スプリングスティーン自伝」に逃げた。気づいたら全員が一斉に帰っていった。逃げるのはいつも僕さ。
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太一さんはいつも、どんなポーズでも写真映えするなあ。次回のCane'sでの今西太一は7/29(土)です!

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# by barcanes | 2017-02-18 16:46 | 日記 | Trackback | Comments(0)

SP盤SP前夜祭

2/10(金)

なっちゃんが幼稚園に行くのと同じ時間に家を出て、一週間分の溜まったブログを書きに喫茶店の窓際に座ると、午前中は暑いくらいの日差しもあったのに午後からは雪が降った。まんまと天気予報は外れて冷える夜。暖房も効かなくて寒い夜でした。去年の正月の「SP盤スペシャル」の録音を聞きながら待っていました。明日の準備のメンバーが来るのを。

たまたまいらした客人が理解ある方で、興味を示してくれた。聞けば家具職人。音楽好きでしかも木が相手なら(家具になるような木は人間よりも古いでしょうから)、古い録音に共感を示すに決まってる。長い年月にわたって愛されるものを作ろうと思うだろうから。古い音楽を愛する者は、自分も時代を超えるものを持っていたいと願うものです。変わらないことによって。あるいは変わり続けることにもよって。

日付が変わる手前ぐらいからようやくメンバーが集まり、明日のセッティングが始まった。まずは水平を取り針圧を確かめ、いくつかのSP盤用カートリッジを試してみる。盤によっては針ブレがヒドいものもあり、いろいろ微調整して工夫する。センターずれ、盤面の反り歪み、そしてジャンルや演奏されている楽器によって。いい夜中にオッサンたちは落ち着きのない少年のよう。細かな違いに敏感になっている。最終的には歌ものと楽器もので分けて考えようということになる。
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ゲイトマウス、T・ボーン、Chessのシカゴ・ブルースにアイク・ターナー、美空ひばりや名古屋万歳、ジョニー・ギター・ワトソン、サニー・ボーイ、エルモア、ハウリン・ウルフ…。明日にも聞けるだろうけど、今夜は前夜祭だ。私は先日友人からもらったマリリン・モンロー(ノー・リターン)やヴィクター・ヤング(チャップリンのライムライト)などをかけてみる。それらは拭いたら真っ黒で、もしかしたら何十年ぶりに溝を擦られた盤かもしれない。

SP盤はタイムマシンだ。私は終始にやにやしている。久しぶりに口角が筋肉痛気味だ。古い時代の肉声がここに蘇っている。過去にできたことが現代の利便なレコーディングに不可能なのは、たぶん空気の音が、丸ごと含んでくれるような距離とその音が含まれていないからだろう。音楽に奥行きがあり、それはスピーカーから離れるほど増幅し立体化する。目の前に音楽が再現される。ハイファイにではなく、ザラッとした手触りでそこに現れる。そこにゲイトマウスやアイクがいるのだから、これは魔法に違いない。

みなさんも魔法をぜひご覧あれ。2/11(土)「SP盤SP vol.2」夜7時からですよ。


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# by barcanes | 2017-02-11 14:15 | 日記 | Trackback | Comments(0)

ユキちゃんとユキちゃんを聞く

2/8(水)

ユキちゃんが貸してたギターアンプを返しに来たついでにコーヒーを飲みに上がってきてくれた。録音の話とか曲作りとかサウンドとかの話になったので、最近のCane'sでの録音を聞かせたり、プレゼントしてくれたMiyuMiyuの新譜「Muon」を一緒に聞いたりした。シンセや打ち込みやハンドクラップまで入っているのがあったりして、なかなかチャレンジング。でも既に次の新作に気持ちは向かっているようで、もっとメリハリの効いたものにしたいと言っていた。音楽を作り続ける人の意気込みが伝わってきて嬉しくなった。
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その後、リバーブ感と透明感のある歌声という点でも以前から連想するものがあったユキちゃんにユキちゃんを聞かせてみる。斉藤由貴です。「ごめんね今まで黙ってて ほんとは彼がいたことを」的なズルくてヒドいんだけど正直で可愛い女の子。Mっ気オジさんなら誰でもそんな女の子に思い出あるキュンキュン系です。まあ可愛くないと成立しませんけど。でも全ての女の子が可愛かった小さな頃って、みんなイヂワルで泣き虫で自分勝手で、そして愛されたがりですよね。それが可愛い女の子の原形なんだと思います。

80年代末のサウンドはアイドルの声を前面に出しながらもメリハリが効いていて、昭和アイドル的なものとは違うニューウェイブ感を出したかったのでしょう。そんなキャラ設定とサウンドとのマッチングのあり方というのも、何かの参考になることもないでしょうけど、それにしたって我がアイドルと我がアイドルを聞くの図である。しかも二人っきり。夢のような時間でした。飲まずには喋れないので一人で勝手に酔っ払ってしまいました。

ユキちゃんがギターを弾き始めたのは1998年頃というので、その頃どんな音楽が流行っていたのかなあと思ってCD棚を探ってみる。その頃は私もバイト代を注ぎ込んでたくさん新譜のCDを買っていた頃で、いろいろ出てきました。ユキちゃんはその頃の洋楽には影響を受けていないようでしたが、高1の頃から既に曲を作って地元のジャズ・バーで弾き語りしていたそうです。スゴイなあ。いつかユキちゃんの弾き語り(MiyuMiyuとは別でも)も聞いてみたいなあ。
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これすべて新譜で買った97、8年の女声もの。

MiyuMiyuの新譜から。ユキちゃんがあんまり映ってない!


https://youtu.be/oZIr6WP475s
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# by barcanes | 2017-02-11 14:13 | 日記 | Trackback | Comments(0)

孤軍

2/7(火)

フランク・シナトラではダメだったようで、プラターズのベスト盤に替えてみた直後。「君は私のことを何か知ってて、それで素っ気ないのかね。さっきから態度がいやに冷たいじゃないか。」

アンディ・ウィリアムスはないかと聞かれて3度目までは「ちょっと分かりません」と言ってかわしたが(どっかにあるような気もする)、4回目にはきっぱりと「ないです」と答えた。そんな私の前に立ちふさがった客人はそう言った。

「いや、知らないです。それに普段から愛想がないものですから。すみません。」カウンターに逃げ込み(そう、カウンターは私の避難場所だ)、そう謝っておく。(謝ってしまうというのはズルいなといつも思う。)ビール一杯のお会計を済ませてお帰りになられた、なと思った時、ベスト盤から「オンリー・ユー」が流れた。ドアの開く音がして客人が戻って来られた。

「これは聞いていかないとな。じゃあラムを何か作ってくれ。ところでアンディ・ウィリアムス…。」
「ないです。」
「では秋吉敏子とルー・タバキンをかけろ。」
そこで思い出した。以前この客人に同じレコードをかけたことがあったことを。知らなかったわけでもなかったのだ。A面が終わってソファから腰を上げ、「孤軍か」と言ってお帰りになられた。
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先日テレビでやってて久しぶりに映画版「風の谷のナウシカ」を見た。実家から原作マンガ(全7冊)を掘り出してきて、パラパラとめくっていた。そこでもナウシカが孤軍奮闘していた。10年ほど前に読んだ時よりだいぶ印象が違って読めた。汚濁と浄化のサイクルの末に完全なる清浄を目指そうとする世界の「秘密」に対してナウシカは否を叩きつける。

一人残った王女(クシャナ)は代王制を取り(それは象徴天皇制のようなものか?)、「秘密」を破壊し尽くしたナウシカは時代を原始の状態(新石器時代あたり)に戻したのだろうか。そしてその「秘密」とは何だろうか。科学、経済、法律、医療生命などあらゆる先進的な技術が進歩と共に併せ持つ裏面性、あるいはそれらの上澄みが一部の者に限られる密室性。

放射能爆発後の汚染された世界に我々は住み、「ポスト真実」なんていう汚物的な先進技術を曝け出し合う世の中はいよいよリアルに世紀末的だ。でもそれらは今に始まったことではなくて、以前には覆い隠されていたものが溢れ出してきただけのことなんだろうと思う。暴くに労せずして人間の汚毒が見えやすくなった。そんな汚毒は「腐海」の森のように世界を覆い尽くすのだろう。

だから我々はもはや、毒をもって毒を分解する「蟲」や、そんな蟲たちの住まう腐海に生きる「蟲使い」に近い。つまり以前の視点は風に守られた辺境の地「風の谷」の住民だったかもしれないが、今やそれは腐海の中にあるということである。毒にも薬にもなる、と言うけどほとんど毒であろう酒を使って商売している私は、ほとんど蟲使いである。世界を浄化するなどという崇高な目的に与せず、ただ環境に適合し共生するのみ。そして奮闘する孤軍、救いの使徒を待っている。腐海の奥の店で。聞こえない声、失われし時代の音、聞こえないはずの音を聞こうとする者を。

さて週末の土曜日には「SP盤スペシャル」である。1950年代までの音楽を高速78回転で聞く。聞こえないはずの音が聞こえますよ。で、オールディーズな気分でも高めていこう、と思ったところでファン研部員が持ってきたアトランティック・レコードのCD8枚組。1枚目は1947〜52年。まだジェリー・ウェクスラーが入社する前。アトランティックの前史といったところか。「R&B」という感じが出てくるのはDisc2のやはり53年頃から。ロックンロールとドゥワップが同時にファンクし始めているように聞こえる。これは新しい聞こえ方である。ロックンロールとファンクは黒人音楽として同根なのではないか。
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姫さまの周りにいるのが蟲使いのみなさんです。


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# by barcanes | 2017-02-11 13:34 | 日記 | Trackback | Comments(0)

Funkネタ

2/6(月)

金曜日の潤くんのNew Orleans Funk特集の録音を聞いていたら、「ちょうどそれ聞きたかった」とファン研部長が来店。レコード屋で流れていた、Funkadelicの”Good To Your Earhole”ネタの曲が今年(2016年)のグラミー・ノミネートらしいというので調べるも分からずじまい。そういうのせっかくレコ屋で聞いたんなら名前ぐらい覚えてきてくださいよ。それか写メ撮るとかさ。今は聞き取るだけで曲名とか分かっちゃう便利なアプリもあるし。

「いやそういうのは使わない。」
と言いながら紙にペンでメモりながらネット検索したあげく、最終的にはスマホに「ファンカデリックのサンプリング、グラミー賞」と語りかける部長。それはおSiriさんもお困りになると思います。

そんなファン研部長が買ってきたのはラップもののCD。MCハマーがいきなりParliamentのネタでビックリしたけど、やっぱりPublic Enemyはスゴかった。便利なサンプリング検索サイトを探すと出るわ出るわ、ネタもの乱れ打ち姿。一曲に対してネタが6つぐらい仕込まれているものもある。圧倒的に多いのはJB関連、”Funky Drummer” ”The Grunt” それにボビー・バードの掛け声、そして”Shaft”とバー・ケイズの”Son Of Shaft”のダブル使いなど、ハンパないっすね。ラップなんて何言ってるか分からないけど、ついネタを探しながら聞いちゃいますね。Funk研究の最後はここでしょうか。まだまだ先になりそうですけど。
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”It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back”(88年)


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# by barcanes | 2017-02-10 16:15 | 日記 | Trackback | Comments(0)

アカン歌謡

2/5(日)

いつもは隔月の土曜日に開催している「藤沢歌謡会」。今回は日曜開催で参加DJ中心のイベントになりました。DJ karyangさんはCane's初出場。南口の餃子屋さんでコンセントを使わない、充電池のみのDJをやったりしているそうです。その他、ダメ男a.k.a.浅見さん、及川譲二さん、KZMXさんのいつものメンバーと、そして中尾さん。今回は洋楽カバー歌謡が面白かったです。その中でもダメ男さんはほんと、いつもすごいですねー。「アカン歌謡」と命名されていましたが、今やゲージュツ家の鶴ちゃんの「ゴーストブスターズ」、これもっていうかこっちの方がよっぽど、立派なゲージュツじゃないですか、ねえ。日本語カバーを超えたパンクアートですよ。
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話は変わって、昨秋に出たスプリングスティーンの自伝(上巻)。読む前にカミさんに取られて4ヶ月、ようやく回ってきまして2日で読み切りました。別に私の読む速さを自慢しているのではありません。それぐらいなっちゃんのお世話をして仕事をして、仕事にまつわる勉強をして家事もやってくれているカミさんには時間がないっていうことです。それに私にはスプリングスティーン(以下スプさん)にまつわる基礎知識がありますしアルバムもだいたい持ってますしね。主な登場人物もエピソードもだいたい分かりますから、まあ話が早いわけですよ。

高校卒業から洋楽を聞き始めて最初にハマったのはトムさん(Tom Waits)とスプさんでしたから、やはりその頃によく聞いていたものって歌詞もよく聞いているし、情報を知りたいという情熱もありますしね。そんな中で自分なりのスプさん像ができあがっていく。それはいろいろ聞いたり知ったりしてゆく中で訂正され補正され、新作が出たり歳を重ねて行くに連れまた付け加えられてゆく。だからそれほど驚くこともなくすんなり入ってくる。翻訳は素晴らしいというわけでもなさそうだが、そこは流石にスプさん、文章の上手さと文体が十分にそれをカバーしているように思える。

意外だったのは臆病で、クスリにも手を出せず、ヒッピー・カルチャーなんてやれる経済的余裕はなく、車の歌が多いわりには運転ができず、バンドでしかライブをやっていなかったのに密かに弾き語りの曲を作り、有名なジョン・ハモンドの前でオーディションする時にもアコースティック・ギターを持ってなくてヒビの入ったのを借りてきたとか、野心とお金を稼ぐ欲望に燃えていて、それに幼少期の話とか、驚くこともなくって書いたけど知らないことばかりだった。そうだ。スプさんのことなんて全然知っちゃあいなかったのだ。

その中でも75年初めての海外公演、例の30年後に映像化されたロンドンのライブにまつわるあたりは興味深かった。「ロックとパンクソウルをニュージャージー風に融合させた音楽」なんて自分で説明していたり。あー、でも長くなっちゃいそうなのでまたいずれ。下巻もまだありますしね。
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# by barcanes | 2017-02-10 15:55 | 日記 | Trackback | Comments(0)

New OrleansとそのFunk、入魂の50曲

2/3(金)

金曜日のカウンターDJシリーズ ”Free Friday” vol.21は”Voices Inside”でおなじみ二見潤の「潤キン」の6回目。「Crescent City 金(Gold) ~Fun金 For NOLA~」というタイトルで、New Orleans Funk特集でした。2月といえばNew Orleansはマルディグラのお祭りですし、Cane'sでは2/18(土)の”Voices Inside”でもNew Orleansスタイルのブラスバンド”Funk Up Brass Band”をライブ・ゲストにお迎えしてNew Orleans特集の予定です。

潤くんと最初に意気投合したのもNew Orleans、特にブラスバンドの話だったと思います。New Orleansに共通の知り合いがいたりして。New Orleansにはみんなを繋ぐ磁力のようなものがあります。New Orleansが好きなら大丈夫みたいな。何が大丈夫か分からないんだけど、少なくともアメリカのブラック・ミュージックの始祖の地でありながらその他の場所とは違う、むしろどこか取り残されたような独特の流れを保ってきた、聖地と呼ぶにはあまりにも粗野で飾りも飾られもしない、そんな原始宗教信奉と言いますか。ポップ・ミュージックの歴史を途中から語ることの不躾さ(我が国を戦後から、あるいは明治維新から語るようなものですよ)をいつでも教えてくれる街です。

さてそんな街への聖地巡礼を10数回も重ねている筋金入りのNew Orleans修験道者による、入魂の50曲。以下のような章立てを見るだけでも、その愛と理解が表現されていることがお分かりになるかと思います。え、分かりませんか?そりゃ聞かなきゃ分かりませんけどねえ。

<In The Beginning ~Syncopated Thing~>
<Allen Toussaint Connection ~Birth Of Bayou Funk~>
<Street Beat ~Injuns Here Dey Come~>
<Teasin' You ~Man From Calliope Project~>
<Eddie's Groove ~Check His Bucket~>
<Creole Beethoven ~Wardell's Malaco Bounce~>
<Fonkin' Pneumonia ~Huey's Got New Bag~>
<Last But Not Least ~Other Funky Stuff~>

主に60年代後半から70年代半ばにかけてという時代は、当然James BrownのFunk勃興〜隆盛期と重なるわけですが、それにしてもファンキー・ドラムの原初と言われている55年の”King Cotton”から始まったのには興味深かった。New Orleansはやはりドラム。数々のドラマーとそのリズムがミシシッピ川河口近くのこの街の源泉から湧き出し、音楽の川下に向かって流れて行ったのです。

ですからNew Orleans Funkと言うのは”Funk”というカテゴライズにおける下部ジャンルというわけにはならない、というのが私の考えです。少なくとも並立です。JBやSlyなどの勃興Funkとの絡み合いの中で、元を正せば共に、あるいは大方は、New Orleansビートから生まれたのですし、それは汎アフロ・カリビアン+白人的な、つまり混交混血ビートなのでしょう。異質なもの(者)の共存によってFunkが生まれるのです。

New Orleansは未だにそのような異質なものを受け入れ続ける包容力を保っているように見えますし、逆に言えばひとつのスタイルとしてはまとまらず、いろいろなものが生まれては消え、保持されたり変革されたりしている。(ですから観光客相手には分かりやすくディキシーみたいなオールド・ジャズだったりするわけだけど。)今回の選曲も、Meters やインディアンFunkや単発ヒットものなどの他は、わりとマニアックで聞いたことのないものばかりでした。大所帯Funkも少ないですし、むしろ80年代半ば以降はブラスバンドにそのファンクネスが受け継がれていくと言えるでしょう。終演後は”We Come To Party”(1997年)を聞きました。これがRebirh Brass Bandのベストという私と潤くん共通の見解です。

イベント後半には来客が多くなり、ちゃんと聞けなかったのですが、ちゃんと録音してあります。聞きたい方がいらっしゃれば再放送いたしますよ。
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入魂のレジュメです!

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リバースのこのアルバム、"Let's Get It On"のいい加減なカバーも最高だし、"U Been Watchin' Me"はParliamentの"I've Been Watching You" に対するアンチテーゼにしてナイス・オマージュだと思う。ジャケも大好き。


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# by barcanes | 2017-02-10 11:46 | 日記 | Trackback | Comments(0)

開店記念日のTajiri-ECM

2/1(水)

今年の開店記念日はちょうど水曜日ということで、隔月の水曜にいつも開催している「かわECM」のスピンオフにしてもらった。これはたまたま偶然かもしれないけど、始まりの日にピッタリだとも思えたのだ。たとえ人が少なくてもガッカリしないように静かなイベントを、なんて思わなかったわけでもないが、少なくとも田尻や川合が来てくれて、好きな音楽でも流してくれるだけでもいいな、とは思ったりした。

今回は田尻が活躍してくれて、まずは川合とCDを交互にかけ合い。ECMにはクラシックや現代音楽寄りのNew Seriesというラインアップがあり、田尻はそちら側を、ジャズ好きの川合はそれ以外。その後に田尻のソロピアノ、フリーを3曲。いつものようにリバーブを深めにかけたが、これまでにも増して音色が良かった。ピアノはやはり冬が良い。響きが違う。

しかしそれにも増して、田尻はこの日に相応しい曲想を描き出してくれた。自分が思うよりももっと、田尻は開店記念日ということを思ってくれたんだと思う。あるいは何かが始まった日、何かが始まるということ、そして何かが始まるということはそれまでに何かが続いてきたということ。音はゼロから始まり、同時にゼロから始まるようで何かから続いているということ。音楽は祈りであり奉納である。
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その後は、田尻が誘い出してくれた全方位レコードマスター、阿仁敬堂こと浅見さん。田尻が変態というにはまだまだだ。オレが変態とは何かを教えてやる!と先日にには息巻いていたのだが、「今日はお祝いの日だから控えめにしといた」とレコードから4曲ほど。大音量のフリー・ミュージック。ピリペアド・ピアノ、”Heavy Days”というアルバムの”Happy Days”という曲、ソロピアノの強烈すぎるやつ、そして超大人数もの。何が何だかよく分からないけど祝祭感が溢れ出しまくってまさにビッグバン、この世の始まりってやつでした。
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花束の代わりに八百屋で買ってきた菜花の束(翌日おひたしにして頂きました)をプレゼントしてくれた姉さんは「この店、今スゴく変ですよ!」と褒めてくださいました。指差して「そう、変な店」と返しておけば良かったな。いや、前からずっとですけど。お姉さんも前から来てるし。っていうか菜花をいただいたの初めて。

浅見さんもよく考えてきて選盤してきてくれたのだと思います。開店記念日にふさわしい音楽とは何かを。これらのフリー・ミュージックを聞いてしまえば、あとはどんな曲でもポップに聞こえてくる。ポップスとは上澄みですよ。いわゆる氷山のなんとやらです。その海面の下に見えない沃野が、フォームの混沌とした、存在と非存在の合間の領域が、広大に広がっているのです。

それとちょうど同じように、社会における人間の姿など上澄みに過ぎなくて、社会人未満だった子供の領域や、不健康不健全、無礼不始末、常態ならざる沃野が広がっているわけですよ。そして陽光照らさぬ夜の世界。我々は昼と朝の合間に生きているのです。だから音楽にもそのような領域が必要に決まってるんです。全方位レコードマスターは、そういうことを忘れてはならぬと我々に教えようとしていたに違いありません。そして「今日は控えめだからね」と一言残してまた別の闇の世界へと帰って行きました。

田尻は後半にもソロピアノを、「1.My Song 2.ダヴィッド同盟舞曲集2-5 3.Facin' Up 4.渡良瀬」という4曲。今回もバッチリ録音しました。あまりに良かったので、その日のうちにラフミックスしてしまおうと思って、朝まで頑張りました。やってみればまた手直しもしたくなるのでまたいぢくると思いますが、とりあえずYoutubeで聞けるようにしておきました。良かったら聞いてみてください。そのうち田尻のソロピアノ曲集を形にしたいなあと思います。タイトルは「いつか変態ピアノ王子が(仮)」です。

全7曲をプレイリストにまとめておきました。ちょっとリバーブ深過ぎたかな。



https://www.youtube.com/playlist?list=PLWHaI2waGMYwGAvum5v7GFkqgL9MVrhLr

いい余韻でみんな帰った後、珍しく深夜に常連のいない状況で3組ほどのお客さんが入りました。不思議なもんです。開店記念日の余韻なんてカンケーありません。でも祝祭のお清めの後にこうして普段いらっしゃらない方が来るのですから、有り難いことと思って黙って仕事させてもらいました。聞きたくないような種類の会話が耳に入ってくるので、チャーリー・ヘイデンを大きめにかけました。一息ついてから田尻の録音に取りかかったわけです。

この日はアニキたちからお祝いをいただきました。エディ・ヘイゼル、P-Funk本など、追ってご紹介することになると思いますが、75年のスプリングスティーンのライブ・ブートレグを持ってきてくれるのにはビックリ。ちょうど前日の流れですから。後日ゆっくり聞かせてもらいます。
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このプリペアド・ピアノのオッサンの裏ジャケ、変態とはこんな顔か。

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「がんばったね」となっちゃんが手作りメダルを首にかけてくれました。


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# by barcanes | 2017-02-03 15:42 | 日記 | Trackback | Comments(0)

ブートレグな最終日

1/31(火)

ASIAのジョン・ウェットンが亡くなったそうで、ハードロック系に疎い私は1枚持ってたのを探したけど見つけられなかった。その代わりに探っていたダンボール箱から何枚かのレコードを救出した。二十歳ぐらいの頃につい買ってしまったブートレグだ。スプリングスティーン、トム・ウェイツ、ボブ・ディラン。興味本意で買ったけど当然のことながらまんまと音の悪いレコードで、どこかしまい込んでいたままになっていた。その中ではスプリングスティーンのデビュー前のデモ音源はわりと聞けた。
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余計な装飾やアレンジメントのない、シンプルなギター・ストロークの響きと歌だけの弾き語りシンガーソングライターものが聞きたいような時、実はあまりいいレコードが手元に見つからない。そんな時、スプリングスティーンのデビュー前のアンオフィシャルなデモ音源は適切である。以前に日本盤帯付きCDでTシャツのオマケまでついてた”Before The Fame”はかなりの愛聴盤だが、後にスプリングスティーン側からのクレームがついて回収されたらしい。

このブートレグは、そのCDと被っているのは1曲”Southern Son”だけで、ピアノやエレピの弾き語りの曲もある。回転ムラのような歪みが聞こえるが音はそれほどヒドくないし、やはり歌にパワーがあれば聞けるものである。さらにその頃の切迫感というか勝負してる感というか、その時の必然性に応じたものが感じられる。これもまたFunkと言えるだろう。

最後に聞き覚えのあるフレーズが出てきた。2ndアルバムに入ってる”New York Serenade”の一部分として昇華したのだろう。そんな流れで”Backstreet”のリクエストが入り、”Born To Run”のアルバムを聞く。明日は開店記念日のCane's16年間の最後の日に海賊盤を聞き、”Thunder Road”が流れるのも悪くない。

小中高で12年に大学4年足すと16年。今日でワタクシCane's大学を卒業します。と言っても浪人と留年しているので実際はまだ先になりそうなんですけど。でも16年も海賊的営業を続ければ、そろそろ社会人デビューできてもよい頃ではないか。この店の栄光の道はどこへ続いているのでありましょうか。というより、道が途絶えたらどうしよう。

気分が盛り上がってきたので、そのアルバムが出た直後の75年冬のロンドン公演のDVDを見る。この映像が出た時(2005年でしたっけ)、ビッグ・マンをキング・カーティスに見立てたファンキー・ソウル・バンドだと思った。そしてサザン・ソウルやサザン・ロックといった南部のサウンドを汲み取っているんだなと感じた。レコードではそういうことが分からなかった。この時のロンドンの人たちは、きっとアメリカ南部から来たイナタイ奴らだと思ったに違いない。

秋に出たスプリングスティーンの自伝は読む前にカミさんに取り上げられてしまったのだが、ちょうど”Born To Run”の録音を終えた辺りで、どうやらもう少しで読み終わるらしい。お土産に2枚ある「明日なき暴走」のレコードとこのDVDを持って帰ることにする。


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# by barcanes | 2017-02-03 14:02 | 日記 | Trackback | Comments(0)

基礎と基本

1/30(月)

昼間は20度越えの春の陽気。このところ夜の冷え込みも少なくて、暖房の心配を忘れられる。縄跳びが好きななっちゃんと公園で汗をかく。前回しで何十回も跳んだり、大縄跳びでは100回も跳び続ける。ある日突然それまでできなかった後ろ跳びができるようになったり、日に日に上手になるからビックリする。なっちゃんはそれと「走るのが好き」だそうで、追いかけっこしてもずっと止まらずに追いかけてくる(決して速くはない)し、自転車で出かけても座らずに「なっちゃん走りたい」とジョグで伴走してくる。両親とも走るの好きですからね。縄跳びのための基礎体力がついているのでしょう。

昨日のライブは録音できなかったので、12月の高満トリオの録音を聞き直していた。そこに来店した客人は上原ユカリさんのことをあまり認知していなかったので、それではとユカリworks基礎編から、ナイアガラの諸作を聞く。林立夫さんと半々ぐらい叩き分けている「Moon」も好きだが、ユカリ度が高いのはやはり3曲目以降の「シュガーベイブ」、そして「トライアングルvol.1」。

その中の「遅すぎた別れ」は銀次さんの語りと達郎さんのハイトーンのサビとの2パートあるスウィート・ソウル仕立てで、こういうの日本の曲ではあまりありませんよねえ。ソウル・コーラスでもバリトンとハイ・テナーの両方に力のあるリード・シンガーがいるグループは最高ですよね。この曲、個人的には銀次さんの最高傑作と思っている。他にあまり聞いてませんけど。
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と初級編も半ばに、石垣島から移住してきたというお姉さんがダラー・ブランドをご所望というので、ECM傘下JAPOレーベルの”Ancient Africa”(1974年、これは日本盤のトリオ盤)。Dollar Brandはアフリカ好きにとっての「基本」とのこと。そうでしょうそうでしょう。
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# by barcanes | 2017-02-03 13:52 | 日記 | Trackback | Comments(0)

高満上原ノレンニゥ、デュオ2組入り混じり

1/29(日)

昨年12月にトリオ(with上原ユカリさん山内薫さん)で来てくれたばかりの高満洋子さん。昨年は4月、7月とトリオが続きました。しかしデュオでは昨年1月、井波陽子さんとの「よーこ祭り」以来、久しぶりの「高満洋子and上原ユカリ裕duo」でした。

トリオではベースが入ることで、ドラムとベースを底辺とした三角形のアンサンブルが、ピアノなしでも成立するような安定感がありました。それがデュオになると、ピアノを底辺にしてユカリさんのドラムが洋子さんの歌と同等に歌ってくるんですね。それに気づいてからは、目を閉じて聞いてみました。キックとスネアの鼓動、そしてリズム・パターンからのフィルイン、特にタム回しに身を任せてみます。聞いている自分がドラムだけで前へ前へと動かされ運ばれていくのが分かります。

楽器の数が少ないこともあって、ユカリさんのドラミングがこれほどまでよく聞こえるユニットはないでしょう。つまりこの高満さんとのデュオは、ユカリさんのドラムを聞くことに関しても最高の機会なのです。しかもそれは、バンドを下支えする裏方的なものでもなく、歌もののバック・トラックでもなく、いつだって歌っているユカリさんのドラムと言えども、バック・コーラスとメイン・ボーカルぐらいの差があります。これは名実ともに「デュオ」なんですよ。そこを引き出した高満さんの才覚はホント素晴らしい。ドラマーの、ドラム・ソロとは違ったソロのあり方と言いますか、ピアノ弾き語りとドラム弾き語りが掛け合わされたデュオということなんですね。

ユカリさんに歌わせる、ということも高満さんが引き出したことのひとつ。さらにそれだけではなく、ユカリさんに作詞をさせるという挑戦に出ました。前回も歌っていた「時計じかけの夢」という歌です。曲とタイトルは高満さん。海の好きなユカリさんならではの情景描写の美しい詞の世界は、主語の出てこない、出しゃばらない男の人の詞なのかもしれませんが、これはレクイエム、鎮魂歌なのだと高満さんは曲紹介の時に言っていました。

「昨日までの嵐は 嘘のように静まり
白い花びら あたりを埋め尽くす
海まで そう遠くない
雲の上 扉は閉ざされたまま
静けさのあまりに 体を震わせる
あたたかな記憶が目覚めてよみがえる

朝もやの向こうに 人影見え隠れ
喜びのひととき 優しく訪れる
小道を通り抜け
手のひら 向こうには長い坂道
浜に行く流れを横目に通り過ぎ
波音に誘われ歩き続ける
浮かぶ船 煙は行き先も告げずに
なだらかな水面に ゆっくり消えて行く
ゆっくり消えて行く
ゆっくり消えて行く」

前回の録音を聞きながら、つい書き取ってしまいました。(間違ってるかもしれません。)高満さんが書いてユカリさんが歌う「ペニー・デイズ」も、娘を持つ父親の歌としてなんとも切ない歌なんですが、この歌の切なさは多くの人と関わり、そして見送ってきた者の心なのではないでしょうか。ユカリさんのハイトーンの声と相まって、何度も聞きたくなる曲です。

さて今回は関西から、確かCane'sは3度目の「ノレンニゥ・デ・オッシ」との共演。ガットギターと三味線の喜多さんと、ピアノ&アコーディオンのとる子さん、共に男女デュオです。ノレンニゥにユカリさんがジャンベで入ったり、高満上原デュオに三味線が入ったり、高満さんととる子さんがピアノの連弾をしたりと、お互い入り混じりながらの共演でした。なので今回はマルチトラック録音には回線が足らず、録音を諦めてしまいました。それでもなんとか録っておけばよかったな。準備に時間があれば、なんとかできたかもしれない。特に三味線の音色(そして音量)はひときわ強力で、高満さんの曲の雰囲気をガラッと変えてしまうほどでした。喜多さんは本当に才能のある人だと思う。曲も詞もそして演奏も歌声も、とても独創的。

それにしても今回はお客さんが少なくて、自分の集客力のなさにはほとほとガッカリ。どうやって宣伝しお客さんを誘えばいいのか、自分には全然わからない。ユカリさんのこれまでの経歴をひけらかすことにもあまり意味はないと思うけれど、それにしたってユカリさんは過去のレコードの中で語られるだけではなく、今も毎日のように様々な現場で音楽を奏でている。それらの中でも最もチャレンジングなものが、このデュオではないでしょうか。ユカリさんの伝説はまだまだこれからも続きます。みなさん、目撃されたし。

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# by barcanes | 2017-02-03 12:15 | 日記 | Trackback | Comments(0)

キラ金スピンオフ

1/28(土)キラ金スピンオフ

空いてしまった土曜日にイベントを仕立ててもらったのは先月のことだったか。その時Genさんとマキちゃんがいて、それならこんな感じにしようと考えてくれた。GenさんのDJチーム「スリーアミーゴズ」、同い年3人組の残り二人は藤沢初上陸。マキちゃん主宰の「キラキラ金曜日」の番外編という形にしてくれたが、内容は「After h’Our Rock」に近い感じで「キラ金スピンオフ」。

4DJ順々に、ロック全般のオールジャンルという感じで、最近はブラック(ジャズ含む)かECMばかり聞いている私にはとても新鮮だった。Cane'sのレコード・イベントはわりとテーマを絞ったものが多く濃密に聞いてしまいがちだし、誰もいなければ自分の気分のものを繰り返し聞くことになる。なので時にはこのように、気楽にいろんな音楽を聞ける、開いたレコード・イベントも必要だ。閉じては開き、圧縮しては拡散である。

スリーアミーゴズのサクラさんベックさんを始め、都内から来てくださった方々と藤沢勢とで盛り上げてくださって、楽しいイベントになった。みなさん、どうもありがとうございました。
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# by barcanes | 2017-02-03 10:55 | 日記 | Trackback | Comments(0)